インタビューinterview

キャリア・学ぶcareer

『自分がいなくてもまわるチームをつくろう』著者 山口 正人氏 インタビュー

働くこと、そして人生、たっぷり語ります。

2008年12月25日掲載

 

【プロフィール】
山口 正人 Masahito Yamaguchi
兵庫県出身。ニュー・サウス・ウェールズ大学にてオーストラリア経営大学院経営学修士号(MBA)取得。(株)日本ブレーン・センター・オーストラリア代表取締役社長、(株)エーブルネット代表取締役社長、(株)V7取締役。
2008年1月明日香出版社より発刊の『自分がいなくてもまわるチームをつくろう』が日本でベストセラーに。内容は、リーダーがオフィスにいなくてもチーム(組織)がまわる「不在によるマネジメント」を推し進めるための大切な考え方や、具体的な方法について説明。新しい形のリーダーシップのあり方、新しい形の組織のあり方を考える内容となっている。

 
 
インタビュアー:長谷川 潤

 

--3つの会社を経営されていらっしゃいますが、簡単に事業内容を教えてください。

まず「エーブルネット」は携帯電話会社で、2つの市場を対象に事業を展開しています。一つは個人を対象にしています。ワーキングホリデーや学生、一般の日本人の永住者向けに行っています。もう一つは法人向けです。日系企業を対象に利用していただいています。日本人が持っているきめ細かい対応を武器に、現在マーケットを拡大中です。
「日本ブレーン・センター・オーストラリア」は、メルボルンにも事務所があります。人材派遣、ビザの代理申請等を行っている会社です。シドニーで1988年創設、今年社歴20周年になります。実はオーストラリアで日系企業を立ち上げて20年継続している会社はなかなかありません。当時は日本人を対象とした人材紹介会社はなく、ビザや通訳翻訳の会社もなく、何をやっても初めてのことでした。
「V7」は、オーストラリアで勉強された日本人を日本の企業に紹介する事業を行っています。オーストラリアの教育水準は世界中でも非常に高いのですが、日本ではあまり知られていません。オーストラリアの大学はほとんどが国立で、全部で50校ほどしかありません。しかしアジアのトップ50の大学の中に、オーストラリアの大学が20校ほどランクされています。日本の大学が約700校という事実を考えると、非常に質が高いことが判ります。
私自身もニュー・サウス・ウェールズ大学にてMBAを取得しましたが、オーストラリアの大学を卒業するのは本当に難しいです。とにかく非常に勉強をする環境が整っており、いかに早く本を読むか、いかに早く文章を書くか、プレゼンテーションの機会も非常に多く設けられています。さらには他のクラスメイトは日本人ではありませんので、彼らとのコミュニケーション方法も身についていきます。そのような環境の中で学習をした日本人の方を、これからの日本の国際化を担う人材として日本の企業に紹介しています。


--以前は「セミ・リタイヤ」を考えていらっしゃいましたが、現在は「生涯現役」を宣言されていらっしゃいます。そのきっかけ、理由は何ですか?

オーストラリアの人たちの考え方は、日本とは違いハッピー・リタイヤメント(Happy Retirement)です。オーストラリアの投資銀行でしばらく働いたことがあるのですが、お給料は普通の方の平均の3倍から10倍ほど多いです。そうすると彼らはある程度働いたら、一般人の生涯給料を簡単にクリアできるわけですから、その分を不動産や株式投資をしています。ハッピー・リタイヤメントのパーティを会社で開催し、みんな嬉しそうで、「俺も早くリタイヤするぞ!」とおっしゃる方もいます。よほどどリタイヤメントが良いことなのかと思いました。
日本は定年まで勤め上げる文化があり、それが立派な社会人としての人生であるという環境からオーストラリアに来て仕事をしていると、みんなハッピー・リタイヤメントなので考え方が変わりました。「じゃあ私も50歳でセミ・リタイヤだ。」と宣言していました。
オーストラリアに駐在し、退職後もオーストラリアにとどまっている方々が多いのですが、その諸先輩の人生を拝見し、お話もさせていただいていると、お金はあるが寂しそうに見えるのです。もう一つは早く認知症になりやすい傾向があります。認知症にならないためには仕事が一番良いそうです。仕事をしていればさまざまな問題、課題が常にあります。それらに対応していると、認知症になる暇もないわけです。その結果気が付いたら、長生きをしていたということになります。「健康がすべてではない。しかし健康を失うとすべてを失う。」―なるほどと思います。確かにお金も必要ではありますが、健康でなければ意味がないわけです。健康であるためには、常に仕事をしていればいいわけですね。
ですので、今から3つの会社をすべて同じようにこなそうとは考えていません。自分の両手の範囲で収まるくらいの仕事、自分が一番やりたくて、やりがいを感じることができて、しかも楽しい…その仕事を今から選んでいきます。それは1つかもしれませんし、3つ全部かもしれません。とにかく私の本のタイトルのように、何とか自分がいなくてもまわるチームを作り、そしてそのやり方でチームが回るように私自身は一生(死ぬまで)仕事をしていきたいと思っています。


--『自分がいなくてもまわるチームをつくろう』がベストセラーとなっていますが、なぜ執筆しようと思われたのですか?

以前オーストラリアのことをもっと知ってもらいたくて、オーストラリアのビザの本を出版しましたが、本を1冊出版するのはものすごく大変です。休日もありません。この本の執筆には4ヶ月を費やしました。途中で休暇をとったのですが、その間も書いていました。やはりいいものを書きたかったですし、考える時間も欲しかったですしね。
本を出版して誰が一番得しているかというと、執筆した本人だと思います。金銭面ではなく、執筆中にとても勉強するからです。執筆中はとても大変ですが、発刊されたときの喜びと言ったらないですね。私はゴルフをするのですが、ホールイン・ワンをするより嬉しいです。
また偶然、知人を通じてとても良い編集者に巡り合うことができました。彼が出版した本はすべてベストセラーになると言われている編集者で、とても素晴らしい物でした。彼に「こういう本を書きませんか?Management by Absent(MBA、不在のマネジメント)の本です。」と提案をしていただきました。「不在のマネジメント」は、やっと最近アメリカの大学でも教えられるようになってきた分野で、日本でそういった内容の書籍は出版されていませんでした。「それは面白い!」と思い、執筆を開始しました。ある意味人生とは人と人との出会いだと思っていますが、本当に素晴らしい編集者に出会うことができました。
まさかベストセラーになるとは思っていませんでしたが、とても嬉しかったですね。タイトルも20通りほど提案しましたが、最終的には編集者側でつけていただいたことは正解でした。タイトルで売れているといってもいいと思います。また内容の構成も一因ではないかと思います。資料や専門書などもたくさん読み、難しいこともたくさん書きましたが、私が提出した原稿の3分の1ほどしか掲載されていません。しかも読みやすいサラッとしたところだけでした。
当初は、社長や管理職の方が対象となるタイトルを考えていました。しかし「リーダー」といえば一般社員のなかにもリーダーの方はいますね。そういうリーダーの目線で本を作り、書き方をしました。すごく柔らかい表現を使用しましています。またアカデミックな専門書でもありません。売れた理由はおそらく若い方、さらにはマネジメントをされている方が読んでも参考になるような内容で、見せ方は若い方向けになっているからかもしれません。


--続編を執筆される予定はありますか?

そうですね…、いずれ出るかもしれませんね。私自身も楽しみにしています。そのためには自分から働きかけないといけないのかなぁと思っています。この本を作るきっかけも、何か面白いアイデアはないかなぁと思い、編集者に働きかけたことがきっかけでした。
目標を定めていろいろやることは楽しいですよね。そういう意味ではベストセラーを2冊にするのもいいかもしれませんね。


--将来書いてみたい本あるいは内容などはありますか?

とても尊敬している故中村天風(なかむらてんぷう)氏の自叙伝の漫画の原作を書きたいと思っています。中村天風氏は世界をまたにかけて大活躍し、経営だけではないですが、経営の神様のような人です。本当に素晴らしい人で、松下幸之助氏や稲森和夫氏などが師事しました。
自分が会社を経営していると本当に大変です。ジェットコースターのような毎日です。売り上げが上ったと思ったら急激に落ち込みます。落ち込んだときに中村天風氏の本を何度も何度も読みました。その度に本当に勇気づけられました。中村天風氏は著書で人々を元気づけ、具体的にどのようにすれば元気になり、成功するかを教えてくれます。
若い方にはあまり知られてない方だと思います。若い方は漫画なら読みやすいですよね。日本の文化の一つと言っても過言ではないですし、今では世界中にファンがいます。日本の雑誌に出て、そこからテレビアニメになり映画になり…、その次に英語や中国語に翻訳したいと考えています。一生かけて中村天風氏の人生の漫画の原作を書きたいと思います。


--若い方へのメッセージをお願いします。

自分自身の人生を振り返ってみると、ほとんどの夢が叶っています。毎年元旦にその年の10個の目標を書いています。学生の頃は「海外に行ってみたい。」と書いて、行くことができました。会社で働いていた頃は「海外駐在員になりたい。」と書いて、なることができました。確かに叶うまでは大変でした。その目標に向かって相当な努力もしました。
メルボルンにいる人たちは、メルボルンに来ること自体でも相当のエネルギーを使ったと思います。貯金や周囲の圧力にもめげずにメルボルンに来ましたよね。
次にメルボルンに来て、何を目標にするかです。目標は一つでもいいですが、私が10個掲げるのは、その年の年末に自分で採点しています。また目標の具体的な数値、ものを目標にすると良いと思います。たとえばダイエットにしても、「今年1.5kg痩せる。」というようにし、毎日努力をすることです。
今は人生が80年ほどあります。人生が100cmならば、メルボルンでの1年はたった1cm弱です。それを思えば思いっきり自分のやりたいことに向かって、周囲のことは気にしなくても良いと思います。自分の人生なのだからと思いますよ。死ぬときに、自分が歩んできた人生が納得できる人生だったかどうか、というのが一番重要だと私は思っています。人生最期のときに自分の人生に納得し、満足し、ニッコリと笑える人が人生の勝者だと思います。
年齢は関係ありません。年をとっていても「これからだ。」と頑張っている人もいます。その気持ちを常に持ち続けることです。その気持ちを持ち続けるためにはどうするかというと、書いてあればいいわけです。朝起きて10個の目標を見ると、やる気が出ます。さらにそういう目標を話すことができる友達を作ることです。仲間を作ることでその話に自然となり、それに目も行くし、気持ちもエネルギーも行きます。
そういうふうに目標を決め、目標達成のための環境作りをすることです。あとはなりふり構わず、余計なことを考えずにシンプルに行動することです。そうしたら人生が終わるときに、自分が精一杯生きた満足感を得られるのではないでしょうか。


--プライベートでのこだわり、あるいはこだわりの物はありますか?

今は3色ペンがお気に入りです。黒・赤・青のペンです。大きいサイズのものはあるのですが、細身のものはあまりオーストラリアで販売されてないですね。また行く先々でよく失くしてしまうものですから、見つけたら買うようにしています。読書するときにアンダーラインをひいたりしています。
また最近は1週間に2冊の本を読むようにしています。以前は週1冊読んでいました。本田直之著『レバレッジ・リーディング』を読んで、彼の推奨するやり方で読むようにしたら1時間で1冊読むことができました。私は特にビジネス書をよく読みます。
本は素晴らしい栄養剤です。本を書くということは著者がありとあらゆるものを本に注ぎ込みます。とても勉強をし、凄く解りやすくするために何度も書き直しをします。それを読めることはとても価値のあることです。ぜひ本田直之著『レバレッジ・リーディング』を読んでみてください。読書の方法が変わってしまうと思いますよ。また良い本にも出会ってください。

 

エーブルネット
URL:http://www.able.net.au/
住所:Suite 30, Level 17, 327 Pitt Street, Sydney, NSW 2000
電話:(02) 8002 3773
FAX::(02) 9283 2829

日本ブレーン・センター・オーストラリア
URL:http://www.nbca.com.au/
メルボルン支店(代理店)Nippon Australian Cultural Service
URL:http://www.nacs.au.com/
住所:Level 6, 520 Collins Street, Melbourne, VIC 3000
電話:(03) 9649 7087

V7 Australia
URL:http://www.v7au.com/

loading Google Map ...

関連記事

最新記事