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小説家 金原 ひとみさん インタビュー

金原ひとみさんがメルボルン・ライターズ・フェスティバルに登場!

2009年09月07日掲載
 

 



【プロフィール】
金原 ひとみ Hitomi Kanehara
日本の小説家。1983年東京生まれ。
小学校6年生のとき、父(翻訳家・児童文学研究家の金原瑞人氏)の仕事の都合で、米・サンフランシスコに1年滞在。その間に村上龍、山田詠美などの作品に触れ、それをきっかけに小説の執筆を始める。デビュー作『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞、第130回芥川賞を受賞。

主な作品:『蛇にピアス』、『アッシュベイビー』、『AMEBIC』、『オートフィクション』、
     『ハイドラ』、『星へ落ちる』、『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』等

 

インタビュアー:倉地 亜矢美、カメラマン:板屋 雅博

 

--どういった経緯でメルボルン・ライターズ・フェスティバル(Melbourne Writers Festival、以下MWF)に参加されることになったのですか?

 私の本の海外翻訳を担当してくれているエージェントを通して「メルボルンに来ませんか?」とのお話がありました。実は毎年MWFへの誘いは受けていたんですが、スケジュールが合わずなかなか実現出来ずにいたのですが、今年やっと来ることが出来ました。

 

--メルボルンの印象はどうですか?

 とても住みやすそうだなと思いました。

 

--実は過去に2度ほど「世界で最も住みやすい都市」ベスト1に選ばれたことがあります。とてもバランスが取れている都市だと私達も実感しています。

 オフィス街と住宅地が別れていて、すごくオン/オフがはっきりしていますよね。ごたまぜになっている東京よりも魅力的に感じます。

 

--何か刺激を受けるようなものはメルボルンにありましたか?

 こちらに来て初めてアボリジニに関する記述を読んだのですが、その辺りの歴史は勉強してみたいなと思いました。

 

  --今回の滞在でメルボルンを観光する時間はありましたか?  

そうですね、子供を連れてきたので動物園とか水族館、博物館とかが中心ですけど。行きたいところには行けています。メルボルン博物館がすごく興味深かったです。普通に歩いていても楽しい街ですね。

    --MWFで27日に行われたセッションですが、実は私も観客として参加しました。作品中に両極端なキャラクターを使っていることの補足説明で、金原さんが「草食男子」というキーワードを出したときに会場がかなり盛り上がっていたことが印象的でした。    

 面白かったですね。現代の男性は、大きく「草食男子(2008年ごろからメディアで取り上げられるようになった言葉。一般的には、協調性が高く、家庭的で優しいが、恋愛に積極的ではなく、性欲も薄い男性のタイプを指す)」とその逆の「肉食男子」に分けられると思います。作品内でもそういった両極端なキャラクターを使うことで、ストーリーがドラマティックに展開することが多いですね。草食男子という言葉、こちらではあまり言いませんか?

 

--私も日本でしか聞いたことがありません(笑)。

 セッションの中で、男性を書くときのお話が特に興味深かったです。「自身は女性であり男性は未知の為、男性を書くときは外堀を埋めていき敢えて核の部分を残すことで、後は読者に想像させる」と仰っていましたが、私も女なので男性のことを100%は理解できず後は想像するしかない、そういった部分で特に作品に共感できる要素が強いのかなと思いました。

 そうですね。男性には、女性になかなか見えない部分や理解できない部分がありますよね。でも外見や言葉、行動を書いていくことで内面を想像させつつ、でも実際のところは分からない・・・そういったところが、女性にとって実際に恋愛をしている感覚と近いのではないかと思います。

 

--女性のことは自身を投影して書かれることが多いのですか?

 そうですね。やっぱり自分に理解できる人間の範囲で書いているので、全く理解出来ないような女性像は書きませんね。

 

--『オートフィクション』の主人公が自分にすごく似ていてびっくりしています。

 それはなかなか面倒な女性ですね(笑) 。MWFでサイン会があったのですが、オーストラリア人の読者の方が、こんな女性が僕の周りにいたらどうしようと思いすごく怖かったと仰っていました。こういった(主人公リンのような)女性像は日本とこちらでは受け取られ方が違うような気がしますね。日本では、女性のわがままな部分やヒステリックな部分などが割と許容されている感じがします。だから、海外の男性がこのような女性像をどう受け止めるのかということはとても興味がありました。

 オーストラリアの女性は独立心が芽生えるのが早いという印象はありますね。教育の仕方に関しても、割と早い段階から独立した1人の人間として見る傾向があるというか。

 外を見ていてもハメを外している感じの女性が少ない気がします。自立した女性という印象が強く、学んでいきたい部分が多いですね。

 

--作品のテーマはどうやって決めていますか?

         自分の中でホットな所を取り上げていくことが多いですね。時代的なものとか流行的なものを書いていっても、あまり普遍的なものにはならないので。テーマも書き方もそうですが、すごく個人的なところをモチベーションに書いているので、そこを突き詰めていくことで、より普遍性に繋がるかなと思っています。

 セッションの中でも「自分はポストモダンと評されることが多いが、実は古典的な人間関係や普遍性をテーマにしている」と仰っていましたよね。『蛇にピアス』に関しても、時代が暴力的な事件がメディアでクロースアップされていた時期と重なり、作品のそういった部分が特に注目されたのかなと思いました。もしかしたら今読み返すと当時と違った印象を受けるかもしれません。

 やはり再読に耐える本というものを目指して書いています。一回読んで「面白かった」と終わる小説はテレビや週刊誌のような残らないものだから、本棚に入れておかなくてもいいものという気がします。何度も読むことでその都度感じ方が違ったり、2度3度と読むことで初めて分かる、そういう読み方が出来る多面的な小説を書こうと思っています。

 セッション中に「日本のマンガやアニメ等の影響を受けているか」という質問がありましたが、他の国でこういった催しが行われる際も日本の文化と絡めた質問というのは出ますか?

そうですね。割と「日本=アニメ、コミック」と結びつける人は多くて、日本のオタク文化とかコスプレについて聞かれることもよくありますね。私自身はあまりアニメなどを観ないのですが、こちらの人と比べたら多少影響は受けている方かもしれませんね。私が生まれた時からアニメやコミックはごく身近なところにありましたから。

 

--他の国でもこのような講演会をしていらっしゃいますよね。今回と他の国とでは会場の雰囲気などが違いますか?

やはり違いますね。オーストラリアは観客の人がみんな素直だなと思いました。ひねくれた人がいないというか(笑)

 

--というと?

       例えば、『蛇にピアス』のプロモーションでイタリアのローマを訪れた時は、今まで行った都市の中でも一番伝わらなかったというか、話が通じにくかった印象が強いです。宗教の問題もあるかと思うのですが、「『蛇にピアス』は悪い人達しか出てこない小説ですが・・」といった前提で取材されるなど、「アウトローの悪い人達の小説」という前提を持ってかかってくるジャーナリスト達が沢山いて。「なんで悪い人達なんですか?」という所から話さなくてはいけませんでした。そういう点では、オーストラリアはコミュニケーションが取りやすかったですね。

--やはり国によって受け止められ方が違うんですね。

 そうですね。イタリアは、そういう意味では不良小説、悪い小説、タブーというような取り上げ方をするメディアがすごく多くて。逆にフランスに行った時はすごく好意的でした。「これこそ文学!」と言ってくださる編集者や作家さんが多くて。伝えたい事が伝わっているという実感がすごくありました。

  

--面白いですね。アジアはどうですか?

 アジアは香港にしか行った事がないのですが、香港の場合は現地の人よりも向こうに住んでいる日本の方が講演会に多く来ていただいたので、現地の方の反応というのは少し掴みづらかったですね。ただ、アジア圏は翻訳版が出版されるスピードが早く、原作が出てからかなり早い段階で出版されます。今一番早いのは韓国で、日本で小説を出したら1ヵ月後には韓国でも出版されるというような、かなり近い良い関係にあると思います。文化的に近い感覚もあるので、受け入れられている感じがします。

 

--映画についてですが、他の国でも映画化というお話はありますか?

       一度イギリスの監督が『蛇にピアス』を撮りたいと仰ってくれたのですが、その時もう既に日本で映画化の話が決まっていました。私的には日本版映画とイギリス版映画が出てもいいと思ったのですが、監督は「ならば他の作品で・・・」と言ってくださったので、もし実現したらいいなとは思っています。

 

 


--金原さんのことを「皮膚で考えて脳で感じている」と評している記述を読んだことがありますが、そういった皮膚感覚を意識して書いていますか?

 そうですね、あまり頭で考えても答えが出ない時が多いです。動物的感覚というか、脳よりも体で世界を捉えたほうが生き易いと思っていて、その辺りは小説にも出ていると思います。

 私は、年齢を重ねていくにつれ、どうしても頭でっかちになってしまう感覚があります。

 言葉や状況に縛られてしまう感覚はありますよね。やはり言葉で考えてしまうとどうしても平面的になってしまい、一元的な見方しか出来ないので、そういう風にならないよう気をつけています。

 

--『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』では源氏物語『葵』を独特の視点から再構築して書いていらっしゃいますが、全くのオリジナルの作品を書き上げる時と比べて何か違う点はありますか?

   全く違いますね。もうすごく苦労しました(笑) 。原作が名作で、自分がその名作を超えられるところがあったとしたらそれは何処だろうと考えた時に、結局同じ土俵で越えられるはずはないから、それこそ完全なオリジナル作品を作ろうという風に考えました。源氏をほとんど意識させず、普通に現代小説として読めるようにと。

 

--今までの作品の中で最も思い入れが強い作品はありますか?

   『AMEBIC』ですね。一番時間をかけて書いた苦労した作品です。本当に何百回と推敲して、でもなかなか完成しなくて・・・もうこれ以降小説は書けないのではないかとすごく思い悩みながら書いていました。主人公に憑依してしまっているというか、主人公が私に憑依しているというか、本当に自分と主人公がごちゃごちゃになっていました。拒食症の女の子の話だったので自分も食べられなくなって眠れなくなって・・・このまま私は死んでしまうのではないかと思うぐらい大変でした。

 

--これから書いてみたいテーマはありますか?

もう4年ぐらいずっと言っているのですが、「家族」をテーマにした小説をいずれ書きたいですね。

  

--ご自身にも家族が出来て変化はありましたか?

 旦那と二人の時は超自堕落な生活を送っていましたが、子供が出来てからは超規則的で健康的な生活になりました。執筆の時間が夜から昼へ、というのが一番大きな変化です。

  --それでは最後にMWF全体についての感想をお願いします。 --それでは最後にMWF全体についての感想をお願

--それでは最後にMWF全体についての感想をお願いします。

参加されている作家陣に関しても会場に関してもすごく質が高いなと思いました。とても文学や芸術に関して理解がある都市だなという印象を受けています。パネルディスカッションやセッションなど通訳を介して行いましたが、司会者の配慮もあってすごく話しやすい環境で行うことが出来ました。とても満足のいくフェスティバルになったと思います。

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