内田けんじ監督 作品上映直前インタビュー
12月1日(土)17:00から上映!! 『鍵泥棒のメソッド』
Japanese Film Festivalのゲスト監督としてメルボルンを訪れ、明日(12月1日5:00pm〜上映、Hoyts Melbourne Central)「鍵泥棒のメソッド」の内田けんじ監督に今回の作品や映画に対する思いなどをうかがいました。
はじめてのオーストラリアとお聞きしましたがメルボルンの印象はいかがですか?
人がとてもフレンドリーですね。全体的に安全な感じがして住みやすそうなところ、という印象。
今回の作品『鍵泥棒のメソッド』の見所を教えてください。
やっぱり役者さん!
作品の設定をすごく思い切っているので、そこで演じている役者さんを見てほしい。小さな役やワンシーンにしか出ていない役者さん達も贅沢で味があります。劇団で舞台に立たれている有名な役者さんにも出てもらっています。
とにかく役者さん(笑)!!
前作「アフタースクール」(2008年の作品)から続き、堺雅人さんを起用されていますね。
2作連続で出てもらおうという意図はなかったんです。僕は毎回、真っ新な状態でキャスティングをするのですが、たまたま堺さんになったということ。脚本を書いている時も役者さんを思い浮かべない。完全に書き終わってから「誰にやってもらおうかな」って考えます。
香川照之さんは監督から見てどんな役者さんですか?
色んな監督が香川さんに出てもらいたいというのは、よくわかります。なんでもできる人なので…表現の幅が広いというか。監督が何をやりたいのか読み取るのも早いし、現場の雰囲気作りも良くしてくれますし。
広末涼子さんを起用されたのは?
広末さんはちょっと他の人と違う空気感を持っているので「コメディに向いているな」って思っていました。堺さんと香川さんの間に入ってくる役なので、その2人の雰囲気に飲まれない独立した違和感を持ってて欲しかった。インパクトのある透明感というか、何をしても惑わされない「香苗」というキャラクターにすごい味が出るな、と思って。他の人の芝居に合わせるんじゃなく完全に独立してほしいと広末さんには伝えましたし、このキャストが集まった時は僕も撮影を楽しみにしていましたね。
監督は「わかりやすい映画」が好きということですがその理由は?
わかりやすい映画が好きで選んでいるというよりも、今まで観てきて好きだなあと思うのが全部わかりやすい映画だったんです。難解な映画が嫌というのではないし、そういう中から好きな映画もあります。でも大半がわかりやすくてシンプルなものが好きだなぁと。
監督が映画を目指したきっかけは?
それが今イチ覚えてないんです(苦笑)、たぶんジャッキー・チェンかロッキーじゃないかなと。ジャッキー・チェンの映画が大好きで映画館に通っている時に「プロジェクトA」のエンディングでメイキングのNGシーンがあるじゃないですか。あれを観た時に「映画って作ってるんだ!面白そうだな」、「1カット、1カット撮ってるんだ~」と思って。小学6年ぐらいでしたね。で、中学1年の頃には『映画監督になる!』って公言していました。ロッキーは生まれて初めて感動した映画だったんです。音楽でもなく漫画でもなく、自分がブルブルっとしたのが映画だった。そういう体験が重なったのでしょうね。
近年、日本映画が海外で評価されていますが、作り手としてどう感じますか?
いろんなバリエーションが増えたんだと思います。すごい個性的な人たちが出て来て、僕自身も昔より日本映画を観るようになりましたし、観たいと思う人が増えましたよね。海外で観てもらえるというのは映画のいいところなんでね。すぐに国境を越えられるというのは素晴らしいと思います。
昔の日本映画なども人気が出ていますね。
黒澤明の映画だったら、世界中の映画を志している若者はみんな観ていると思いますよ。僕も小津監督とか黒澤監督とか、お手本としてサンフランシスコの大学の授業で何度も観ました。
最近の日本映画は一般的に面白いという事と外国の映画を字幕を付けてでも観るっていうのが成熟してきているのかなと思います。あとはやっぱりアニメの力も大きいんじゃないですか。アニメによって日本に興味を持って日本の文化や他の音楽や映画を観たいと思う人が増えたんじゃないかとも思います。
オーストラリアに来て映画に使えそうな場所はありましたか?
さっきも言ってたんですけど、こういった建物(映画館併設のラウンジ)の中でも「カメラ置きやすいなぁ」とか空間が広いんでね。あとライティングが暗めできれいだなぁ、とか。映画やってるとそうなりますよね。どこいってもロケハンの目で見ちゃう。「ここは切り返したらカメラ置けないな」っていうような(笑)。道路も広いし、空も青くて大きいし日本より断然撮りやすいんじゃないかと。
次回作、または将来撮りたい映画についてお聞かせください。
次回作については色々と構想はありますが今はそれ(映画作り)に向けて、というだけですね。もう一回撮りたいという。とにかく、お客さんが「観てよかったな」というものを撮りたいですね。お客さんっていうのは実は僕なんですけど…僕がお金払って観るとしたらどんな映画なのか、ワクワクするのか?というのが始まりですね。
監督にとって映画とは何ですか?
難しいですね。
(かなりの沈黙の後、堰を切ったように…)
唯一、(映画は)飽きないんです。僕、飽き性なんで。。
夢中になれるというか、半強制的に夢中になれなきゃ映画は撮れない。夢中になれないと成立されないものなので、夢中になって映画のことしか考えないみたいな時がずっとあるっていうのが、苦しいときもありますけど、すごくなんかこう、精神衛生上、良いっていうか。余計なこと考えなくなるんで。幸せだと思う。
お客様に向けてメッセージを!
今回の映画祭は、ほぼリアルタイムで新しい映画がラインナップされてますので、日本が今どうなっているのかがわかると思います。こんなに一気に観られる機会もないと思いますし。日本人の人には字幕なしで観られる優越感に浸ってほしいですね。逆に字幕読んでる人が笑ってないところで笑えたり。日本語の良さというのでしょうか。逆にオーストラリアの人がこんなところで笑うんだっていうことやこんなふうに思うんだ、という反応も楽しめますし、外国で日本映画を観るというのは二度おいしい事だと思います。
とにかく、この機会に、是非多くの作品を観に来てほしいですし、やっぱり魅力的な役者さんたちに会いに来てほしいですね。
内田けんじ監督
1972年生まれ、神奈川県出身。
サンフランシスコ州立大学芸術学科映画科で学ぶ。
卒業ご帰国し、自主制作「WEEKEND BLUES」が第24回ぴあフィル未フェスティバル「PFFアワード2002」にて企画賞、ブリリアント賞をW受賞。そして劇場デビュー作「運命じゃない人」は第58回カンヌ映画祭でフランス作家協会賞、鉄道賞、最優秀ドイツ批評家賞、最優秀ヤング批評家賞の4冠を受賞。08年上映された「アフタースクール」では全国大ヒットロングランを記録。
16th Japanese Film Festival
http://www.japanesefilmfestival.net/
鍵泥棒のメソッド