インタビューinterview

グルメgourmet

Little Red PocketバーテンダーDavid Van Iersel氏

語りだしたらホントに止まらないSakeカクテルのこと

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2012年3月14日掲載





 

【プロフィール】
シティにあるJapanese Tapas Bar“Little Red Pocket”ミクソロジスト(バーテンダー)。お店のテーブルにiPadを設置してメニューのオーダーをするなど、革新的なバー経営を行う。

 

-- Little Red Pocketでは日本のお酒を多用されていらっしゃいますが、その背景を教えてください。

  2011年8月にこのバーをオープンする際に日本のお酒を使用することになったのですが、最初はお酒のことを全く知らなくて、「お酒は米からできている」ことくらいしか知りませんでした。偶然にも友人がコンテンポラリーの日本食レストランを経営していて、彼から少しお酒のことを教えてもらい、お酒のリストを作成してもらいました。

  私は過去にメキシコのテキーラ蒸留所に行ったり、スコットランドやイングランドのジンやスコッチ蒸留所に行ったり、ペルーのピスコ*醸造所や多くのワイナリーももちろんで、アルコール類の知識は豊富に持っていますし、これらの製造法も理解しています。またトレーニングとしてアルコールの蒸留法やワイン製造法にも携わり、お酒のブレンディング法も学びました。

*ピスコ
ペルー原産のブドウ果汁を使用した蒸留酒。淡い琥珀色。アルコール度数42度。



  日本のお酒についてはその製造方法について学び、知識をある程度のレベルにまで持っていく必要がありました。前田屋の酒マスター・トシさんにも手助けしていただき、製造法、異なる米の種類や麹なども学びました。そのおかげで個々のお酒のプロファイルや味、香りなども理解することができています。

  オーストラリアでは多くの人がまだ「日本のお酒」については飲んだことがないなど、知らない人が多いですね。日本食レストランではお酒に対してある程度の知識を持っているお客もいますが、Little Red Pocketに来るお客さんには全く知識が無い方もいます。



 お酒の説明をすることもそうですが、どうしたらもっと気軽に受け入れられるかと考えたところ「酒カクテル」として出すことにしました。当初は12種類だけ準備しメニューに掲載し、そうすることでアルコール・ドリンクの一つとして受け入れられるようになりました。

  お店では90%のドリンクが酒や梅酒を使用しています。またターゲットは‘女性’で、カクテル市場の70%は女性が動かしていると言われています。またたとえば12年ものの山崎ウイスキーそのもの自体はとても高額ですが、カクテルにすることでリーズナブルな価格で提供できます。

 
山崎ウイスキー
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-- たとえば梅酒はどのように使用されていますか?

  宇治茶梅酒について言えば「Jade Temple」というカクテルがあります。これはキウイ果実や宇治茶梅酒、日本酒、ライム果汁、ジン、シュガーシロップを混ぜ合わせてマティーニグラスに注いで出しています。口当たりが軽くドライですが、さわやかですっきりした味わいです。緑茶の香りもしっかりしていますし、キウイとの相性も良いです。
 

 
  また黒糖梅酒は山崎ウイスキー、ラズベリーなどと合わせて出しています。お客の反応もとっても良いですよ。梅酒はとても甘いですし、カクテルとしてはこれほどまでの甘さをお客は求めていません。カクテルにすることで、さわやかな口当たりで飲みやすくなるのでお客も楽しんでくれています。
 
  お店では黒糖梅酒は4種のカクテルを用意しています。お店でも人気メニューですし、カクテルミキサーとしても最高のお酒の一つで、パーフェクトなお酒です。新しくカクテルを作る際にはベースのお酒であるウォッカやジン、バーボン、スコッチ、蒸留酒などにさまざまなものを足して味を調えますが、黒糖梅酒には甘みもありますし、ベリー類との相性がものすごく良いことが判ったからです。



 宇治茶梅酒                黒糖梅酒 

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-- カクテルのアイデアはどこから生まれてきますか?

  そうですね…。かつては新しいカクテルを作るのに多くの時間を割いていました。
ロンドンのバーで働いていたときは150種類のカクテルがあるお店で、本当にとても忙しいお店でした。そこでの経験もあり、どのお酒が何と相性が良いか、香りや味についても学ぶことができたおかげで、シェフのように材料を渡されてそこから料理を作るようにカクテルを作ることができるようになりました。このレベルに達するとカクテルを作ることがより簡単になりましたね。お客がたとえ「コレを使ってほしい」といったカクテルの材料を提示してもらわなくても、「こんなカクテルが飲みたい」とリクエストがあれば作ることができるようになりました。

  カクテルをオーダーするのは、コーヒーをオーダーするのと似ています。コーヒーが飲みたいときはLatte with two sugarあるいは、Short Black no sugar、 Long Black with half sugarなど個々で決まったものがありますよね。でもカクテルとなると単に「カクテルが飲みたいんだ」とリクエストされることがあります。じゃあ甘い方が良いのか、ドライが良いのか、アルコールの味や香りを味わいたいのか、ショート、ロングなどたくさんあるんですよ。



  
 

-- 最近お気に入りのお酒はありますか?

  しそ焼酎・鍛高譚(たんたかたん)は大好きです! 本当に素晴らしいお酒です。自分でも驚くほど大好きで大ファンなんです。立山梅酒も素晴らしいですね。梅酒は数多くを味わってはいませんが、バランスも香りも素晴らしく最高品質のお酒ですね。
 

 
鍛高譚
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-- バーへ来てカクテルを飲まれるお客の反応はいかがですか?

  中には日本のお酒を飲まず嫌いの人や、味や香りが苦手な人もいます。そういったお客には、カクテルの説明をして、キウイ、アップル、ライムなど多くのフレーバーがあることを伝えています。そしてお酒の味や香りが出ないようなカクテルを作りますね。

  お酒自体を飲みたい人には、まずは少量のボトルのお酒をお勧めしています。少量であれば他のお酒も一緒にオーダーして飲むことができて、お酒が「いいね!」ってなったら一緒に来ている周りの人たちも試飲ができますしね。

  日本のお酒は主にカクテルのベースとして使用しています。ウォッカやジンとは異なりソフトな味わいなので意外と飲みやすいです。もしお酒をウォッカやジンに入れ替えると、その味がきつくなってしまいます。エレガントさやソフトさが欠けて、味や香りに影響が出てしまうこともあります。日本のお酒はその点エレガントで軽く、ライチやローズ、アップルなどのフレーバーを加えてあげることで、とても優しい味やフレーバーに仕上がります。

  長年の経験から、バーに来てカクテルをオーダーする人たちには、あまりアルコールの味を味わいたくない傾向があるようです。そういった人たちにとって、たとえばChoya梅酒が良いのは梅やアップルフレーバーもして飲みやすいのに、少量でもアルコールが含まれていますよね。日本のお酒はオーストラリアではまだまだ高価な商品ですので、なかなか購入まで結びつかないのも事実です。多くの人は「SAKEは日本のアルコールでお米からできている」ことくらいしか知りません。またお酒のパッケージやラベルのデザインのSAKEを選ぶ決め手になっているようです。
 

    

 

-- なぜミクソロジスト(バーテンダー)としてのキャリアをスタートしたのですか?

  大学生の頃、週末のお金を稼ぎたくてバーでバイトを始めたのが最初です。すごく楽しかったですね。そして大学を卒業後にロンドンへ行きました。どれくらい滞在するのか決めていなかったのですが、結局3年ほどバーで働きました。その経験を通して勉強すること、学ぶことも多く、しかもものすごく楽しかったんです。

 カクテルを作ることや、同僚と働くこともとても楽しかったですね。なので、本当にミクソロジストになるのは偶然だったと言えますね。今年で約9年のキャリアになります。

 

  

   


--“THE GINGER NINJA”や“TOKYO YOZORA”などユニークな名前のカクテルがたくさんありますがどのように決めているのですか?

  簡単に発音できることが一番で、シンプルで憶えてもらいやすい名前にしています。完全に日本の名前にしてしまうと覚えにくいと思いますし、私たちには発音できないものもありますしね。

 

-- 日本の酒蔵に行かれたことはありますか?また行ってみたい酒蔵はありますか?

  日本にも酒蔵にもまだ行ったことがありません。今はオーストラリアに居るので、シドニーにあるGOSHU(豪酒)醸造所を見てみたいですね。ヨーロッパや南北アメリカ、東南アジアなどお酒の醸造所はたくさん回ったのですが、日本の酒蔵にはぜひ行ってみたいですね。
 

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* カクテルの歴史は1860年頃のアメリカでお酒を作っていたころに遡ります。1860年に初めてカクテルの本が出版されています。当時バスタブなどで秘密裏に醸造していたのですが、クオリティの良いお酒が作れない環境だったため、美味しくするためにジュースなどを混ぜて飲んでいたのが始まりです。

 

 

 

Little Red Pocket
http://www.littleredpocket.com.au/
422 Little Collins Street, Melbourne VIC 3000
TEL: (03) 9078 2051
Opening Hours: Tue-Thu 11.30am-midnights, Fri 11.30am-3am, Sat 8pm-3am

 

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