インタビューinterview

日本人ソサエティsociety

子ども達の瞳が イキイキと 輝いているんですよ

メルボルン日本人学校 美谷添校長に 聞く

2012年9月5日掲載

 

メルボルン日本人学校は、メルボルン日本商工会議所によって設立され、ヴィクトリア州政府による認可を受けた全日制の私立学校。今年4月からこちらに赴任された、美谷添(みやぞえ)久男校長先生にインタビューさせていただきました。


 

ーメル校の第1印象はどうでしたか?

過去の先生方が築いてきた功績、それが学校の伝統となって、今のメル校の子ども達のすばらしい姿になっているというのを感じますね。
子ども達も一生懸命やってくれますし、瞳が生き生きと輝いているんです。この間も、一輪車に乗れなかった子達が、みるみる間に上達していって、すごいなと思いました。ちょっとしたきっかけを与えてあげることによって、姿が変わっていくというのは、見ていて気持ち良いです。指導していて楽しいですよ。メル校の子ども達のやる気は、非常に高いものがあります。


ー美谷添先生が学校教育で1番大切にしていきたいものは何ですか?

私が大切にしたいことは「自学自治」という言葉です。まず、自分で学んでいくこと。これは学校にいる時だけの学びではなく、生涯学び続けること。もう1つは自分を律していくこと。周りの人に感謝し、自分を律していくのが非常に大事だと思っています。

ー自分を律するというと?

ロンドンオリンピックがありましたけれど、選手達は特別なトレーニングをしてあの舞台に立っています。そこに至るまでに、彼らは周りの人に支えられてきたことや、感謝の言葉をきちんとメッセージとして発していますね。オリンピックに出場するということは、強い意思で取り組んできたことはもちろんですが、周りで支えてくれる人たちを大切に考えられることでしょうか。そういう姿を生徒も私自身も見習いたいですね。メル校の子ども達はみんなそういう力を持っていますし、さらに伸びていく子ばかりだと思っています。そういう姿を私自身も大切に考えています。


ー海外で教えるという、難しさはありますか?

海外であるという環境を活かした学校作りが必要ですね。現地校の生徒と話す「交流学習」があり、文化の違いを少しでも実感してくれれば良いと思っています。これからの国際社会を生きていくには、日本の文化や歴史をもっと学んだ上で交流することが大切です。数々の試練を乗り越えて今の日本の姿があるのですけれど、そういう歴史的な背景を学ばずして、間違った認識を持ったまま交流する事は、日本の大きな損失になります。日本が長い歴史の中で、どうやって国を作ってきたか、もっとそれについて理解をしていくことが、これからの国際社会を生きていく上で大切なことだと考えています。


ーホームページで、学校の様子を伝える「メル校ニュース」が毎日更新されていますね。

学校の魅力を少しでも発信したいという、教職員の強い思いから始まりました。毎日の子ども達の姿をホームページ上で見てもらえるので、学校を分かってもらえる1番の有効手段だと思いますね。ホームページを見て、メル校で学ばせたいとう保護者の方や、メル校で学びたいとう児童生徒のみなさんから、どんどん問い合わせがあることを期待しています。

 

ー9月9日にメル校デーがありますね。

子ども達は一生懸命に準備に取り組んでいます。また、運営委員をはじめ、準備に携わる保護者の方々の協力にも本当に頭の下がる思いです。メル校の良さを知ってもらうためにも、たくさんの人に来て頂きたいですね。


ー海外派遣プログラムへ参加しようと思ったきっかけは?

30年前にカイロの日本人学校に赴任しました。その時の子たちは、ちょうど40歳前後になりますが、現在、日本の繁栄のために世界各地で活躍しています。外で学んだ子は、幼いながらにも、他の国からから日本という国の動きを見て、日本のすばらしさを十分に理解しています。幼い時から日本では味わうことのできない刺激を受けたことは、これからの日本の発展に貢献していく人材となる要素をたくさん持っています。私自身、カイロで学んだことや、日本で校長として経験してきたものを少しでも海外で学んでいる子どもたちに還元できたならいいなと思って赴任を決意しました。

 

ー最後に生徒さんへのメッセージを。

私は、戦争でロシア拘留を経験した父からとのかかわりから、生きる厳しさについては少し理解できた気がします。義務教育までは親の責任、それからはすべて自分の責任という父親の持論がありました。そのため、中学卒業後の生活においては親の支援は一切ありませんでしたが、それが良かったんじゃないかと思っています。子ども達にも「自学自治」の生き方を伝えたい、そういう思いを持っています。メル校の生徒達が、これからの日本を背負ってくれることを願っています。楽しみですね。きっとそういう子がたくさん出てくると思いますよ。

 

ー美谷添先生ありがとうございました。

 

すれ違う生徒さん、先生方全員から大きな声で「こんにちは!」と言う挨拶を受け、感激しました。夢と可能性に挑戦し、感動を生み出す教育を掲げたい、美谷添校長先生のそんな思いが、メルボルン日本人学校のみなさんの姿に反映されていると感じました。

 

文:久里類 写真:佐々木厳


メルボルン日本人学校HP:http://www.jsm.vic.edu.au/

メル校の連載コラム「ワトゥルの風」はこちら

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