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FORMULA One Australian Grand Prix

遂に開催されたF1開幕戦…この結末は予想不可能!

2009年4月2日掲載

FORMULA One Australian Grand Prix

26th - 29th March 2009 @ Albert Park


特集メルボルン“FORMULA OneAustralian Grand Prix”は、関連記事を参照

 

「おおー…!」

ブラウンGPのジェンソン・バトン(Jenson Button)の優勝が決まったその瞬間、メルボルンF1グランプリ会場であるアルバート・パーク(Albert Park)には怒涛のどよめきと拍手が響き渡った。予選、決勝とブラウンGPが1位、2位を独占した。

ブラウンGPとは何ものなのか? 多くのF1グランプリファンが耳を疑ったに違いない。なんとF1グランプリのオフィシャル・プログラムにはその名前も写真も載っていない。メルボルンF1グランプリへの参戦表明が遅く、プログラム印刷に間に合わなかったのだ。これまでの例だと、そんな急造チームは、最下位近辺が定位置だ。そんなチームが予選、決勝をぶっちぎって1位、2位を占めるのは、過去のF1グランプリ史上かつてない前代未聞の出来事である。

 

2008年12月にホンダF1は、本業の業績悪化を理由に2009年以降のF1への参戦撤退を表明した。2009年3月、ホンダF1は、これまでホンダF1チーム代表であったイギリス人のロス・ブラウン(Ross Brawn)にF1チームを売却した。

チーム名は、ブラウンGP。
マシンは、オーナーのブラウンが自ら2009年ホンダチーム用に開発したブラウンBGP001だ。エンジンにメルセデスFO108Wを選び、レーシングドライバーは、ホンダ時代から引き継いだジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロだ。すなわち、ブラウンGPがホンダ時代から違う唯一の点は、エンジンがホンダ製からメルセデス製に変わったという点のみとなる。

『2009年フォーミュラ・ワン・オーストラリアン・グランプリ』は、メルボルン市内の絶景地“アルバート・パーク”で今年も行われた。会期中の4日間ともに良い天気で、特に予選、決勝は雲ひとつない快晴の中で行われた。紅葉が少し始まった“アルバート・パーク”には数十万人の観客が集まった。

今年のメルボルンF1グランプリの最も大きな問題点は、スタート時間にあった。これまでは、午後2時スタートであったのを、FIAの開催地変更も辞さないという強い要求に屈した形で、午後5時スタートとなった。午後2時のスタートでは欧米でのテレビ放送が深夜になり、視聴率が落ちるのがFIAの理由だ。欧米主導のFIAでは、地元の観客よりも欧米の観客の利益を選んだのだ。

決勝レースは序盤から荒れ模様で進んだ。ポール・ポジション(スタート位置が一番前)のバトンが最初から飛ばし、レッドブル(Red Bull)のセバスチャン・ベッテル(Sebastian Vettel)が20秒ほど離れて、激しく追う。フロント・ロー(スタート位置が2番目)のルーベンス・バリチェロ(Rubens Barrichello、ブラウンGP)は、スタートに失敗して、車群に消えていった。

タイヤ選択に失敗したキミ・ライコネン(Kimi Raikkonen)、フェリッペ・マッサ(Felipe Massa)のフェラーリ・チームも10位以下で冴えない。昨年の世界チャンピオン、マクラーレンのルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)は予選後のギアボックス交換のペナルティで18位スタートであり下位を低迷している。トヨタのヤルノ・トゥルーリ(Jarno Trulli)、ティモ・グロック(Timo Glock)は、リアウィングの強度が規定違反として19位、20位の最下位でピットからのスタートだ。

11位スタートのウィリアムズの中嶋一貴(Kazuki Nakajima)が18周目で5位と順位を上げてきた。これから後半にかけて上位が狙えると気負ったのか、19週目にフロントを壁に引っ掛けて単独クラッシュでリタイアする。中嶋のマシンの撤去のために黄色の旗がふられ、セーフティーカーが走り始める。20秒以上の差が開いていた1位と2位の差が無くなり、周回遅れのマシンも同一周回に戻った。すなわち、リタイアしたマシンを除いた全てが振り出しに戻り、遅れていたマシンにもチャンスが回ってきた。

しかしバトンの快調な走りはその後も変わらず、2位との距離を広げていった。最下位付近からスタートしていたトヨタの2台、マクラーレンのハミルトンは、少しずつ順位を上げていく。そして最後のゴールでは、バトンが1位、そして最後に食い込んできた同僚のバリチェロが2位と、ブラウンGPがワンツーフィニッシュ。

3位には、トヨタのトゥルーリが食い込んだが、セーフティーカー時の走行違反で、順位では入賞圏外に落とされた。代わって3位は実力No.1のマクラーレンのハミルトンが繰り上げ入賞となり、4位にはトヨタのグロックが入ってきた。
ハミルトンが乗るマクラーレンは、ブラウンGPと同じメルセデスFO108Wエンジンを積んでいる。
すなわち、1位から3位までをメルセデスFO108Wエンジンが独占したレースであったことも特筆される。 



バトンにとっては、2006年にハンガリーGPにおいてホンダF1で優勝して以来の歓喜の2勝目である。2000年にF1に参戦して8年目になるベテランとしては、2勝目は長かったに違いない。そしてポール・ポジションから優勝するポール・トウ・ウィン(pole to win)は素晴らしいレースであっただろう。

優勝したブラウンGPのシンプルなカラーリングの車体にバージン(Virgin)のロゴがあるのを見た方は多いと思う。実は25日のフリー走行の際には、バージンのロゴは書かれていなかった。ところが予選と決勝の際には鮮やかな真っ赤のロゴが記入されていたのだ。



3月26日の予選(プラクティス)の直前に、F1会場のメディアセンターにバージン・グループ総帥のリチャード・ブランソン(Richard Branson)が、いつものように美女2名を引き連れて報道陣やファンの前に現れた。愛想よくファンにサインをして、カメラマンに美女たちをバックにポーズを取り、パドック・クラブへと消えていった。

そしてその直後(予選スタートの前)にバージン・グループがブラウンGPの公式スポンサーになるとブランソン自らが発表した。
ロス・ブラウンがホンダからF1チームを買収した影ではリチャード・ブランソンとの交渉が背景にあったのだ。

年間300億円以上はかかると言われるF1チームの経営だが、現在の経済不況の中で、非常に厳しい環境に置かれている。ホンダの撤退がその格好の例であるし、トヨタの2010年以降の撤退も確実と言われている。バージン・グループという新しいスポンサーを得たブラウンGPといえども例外ではない。



優勝の余韻もさめやらぬ3月31日、ブラウンBPは、総従業員700名の中で270名の解雇を発表した。4月3日からマレーシアGPが始まるが、今後のF1グランプリの行方は、しっかりとゴールへと向かっているのだろうか?

●FORMULA 1 - ING Australian Grand Prix
URL:
http://www.grandprix.com.au

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