Barista 体験記①Nanae Kobayashi
更新日: 2014-11-28
こんにちは。
今回はいつものブログをひと休みもふた休みもして
私のバリスタスクール卒業生 Nanae Kobayashi さんを紹介したいと思います。
Nanae さんはここメルボルンでBarista を始めました。
全くの未経験の彼女がBaristaの技術をどのように身につけ、どのように仕事を探し、どのように働きヘッドバリスタになったのか。
2つの異なるカフェのオーナーからスポンサーシップビザの打診をもらえるまでになったの彼女の経験は
今後ここメルボルンでBarista を始めるみなさんを勇気づけてくれることと思います。
僕はこの記事を読み、今エスプレッソマシンに隠れて泣いています。
では、Nanae さんの Barista 体験記 をお楽しみ下さい。
はじめまして。メルボルンはElsternwickのカフェでバリスタとして働いている、ナナエと申します。
今回、私の師匠、下山修正さんより、私が全くの初心者からヘッドバリスタとして働けるようになるまでの経験をぜひ話してほしいとご依頼いただきました。まだまだ日々勉強中ですが、こんな私の経験が少しでもお役に立てるのならと思い、今回自分の体験談を書かせていただきます。
『バリスタとしての経験はなくても、他の経験は活かせる!!』
これが、私がこのメルボルンでの経験を踏まえて感じたことです。
現在、メルボルンに来て2年半、バリスタになってからは2年が経ちました。
日本では7年間、音楽関係の会社で働いていました。業務内容は、音楽教室のマネジメント。生徒数が350名の小規模な教室から、2500名の大規模な教室まで。生徒さんは1歳からご年配の方々まで。そして様々な音楽ジャンルの、200名以上の講師。仕事内容は、受付業務から、募集、生徒と講師管理、楽器の販売、イベント等。
仕事をこなしていく上で、何よりも求められたのは、完璧な音楽の知識でも経験でもなく、コミュニケーション能力でした。
教室にいらっしゃる生徒さんは、楽器を習いたいのはもちろんですが、一人ひとりに様々な背景や思いがあります。レッスンを行う講師も同じです。私は音楽を通して、たくさんの方々の思いにふれることがとても好きで、大きな原動力となっていました。
また、会社組織の中で、役割やチームワークも学びました。自分に何が求められているのか、どのようにこのチームを引っ張っていくのか。人とのかかわりから多くを学び、自分の成長を実感することができました。
今、こうしてメルボルンでバリスタとして働いていて、改めて、日本での仕事とバリスタの仕事は共通点が多いと感じます。
様々な年代のお客様がカフェへやってきます。
出勤前にコーヒーを飲みたい人。友達と待ち合わせて会話を楽しんでいる人。休日にリラックスしている人。疲れたからホッとしたい人。家族でのランチ。デート。理由は様々ですが、いや理由なんてないかもしれませんが、その1杯のコーヒーを飲みたいのです。メルボルンでは、人々の日常の中にコーヒーが根付いています。
私がカフェへ行く時、注文した1杯のコーヒーがとても美味しかったら、私はとてもハッピーになれます。バリスタのコーヒーへの愛情と、おもてなしを感じます。だから私も、カフェへいらしたお客様には楽しんでもらいたいのです。
あるお客様が言ってくれました。
「It’s nice to start a day with your beautiful coffee!!」
(あなたの美味しいコーヒーで1日が始まるのって最高!)
バリスタという職業は、単純にコーヒーを淹れる技術だけではありません。カフェで働くということは、お客様への接客はもちろん、他のスタッフとのチームワークなど、全ての基本は“コミュニケーション”です。だからこそ、例え“バリスタの経験”がなくても、活かせるものはたくさんあるのです!!
バリスタになって何をしたいですか?…ただコーヒーを作るだけなら家でもできます。
どんなバリスタがいるカフェに行ってみたいですか?
何のために、バリスタのスキルを身につけて上達したいですか?
答えはもしかしたら、日常のなかにあるかもしれない。
きっと、挑戦してみて気づくかもしれない。
やってみなければ分からない!!!
それでは私が、具体的にどのように仕事を見つけていったのかを紹介したいと思います。
+技術を身につける
ワーキングホリデービザでメルボルンに到着してから最初に、語学学校のバリスタコースに申し込みました。少しはアルバイト探しに役立つかも?という単純な理由でした。
当時の私は、コーヒーについて何も知識がなく、「ラテ?カプチーノ?名前は聞いたことあるけど…」という状態でのスタートでした。
コースは5週間の授業で、実際にエスプレッソマシーンを使ってのコーヒーの作り方はもちろん、歴史、豆の種類、カフェでの衛生管理、さらにはチーズやワイン、履歴書の書き方など、実際にホスピタリティの仕事を幅広く網羅している内容でした。まるで職人のようなバリスタという仕事の奥深さに、コースが終わる頃にはすっかり夢中になっていました。
そして5週間の授業が終わり、いざ、ジョブハンティング!
…しかし、気づいたのです。
ウェブの募集サイトや、店先のバリスタ募集の張り紙、どれを見ても、“Experience is essential (要経験)”“Minimun 2 years experience(最低2年以上の経験が必要)”……。要経験って、誰だって最初は経験ないのに、どうやってバリスタになればいいの?!でも、バリスタの授業で”形だけ”はコーヒーを作れるようになっていた私は、少し練習しただけでは、美味しいコーヒーは淹れられないことは、うすうす気づいていました……。
いくつか履歴書を持っていったり、ウェブで送ったりしたものの、仕事はなかなか見つからず…。経験がなければ、トライアルもやらせてもらえない。どうにか練習できる環境がほしい。お客様に出すコーヒーは作れなくても、ウェイトレスの仕事からでもいいから、マシーンのある店で、バリスタの技術を見たい。
私の葛藤は2ヶ月をゆうに過ぎようとしていました。
その間ジャパレス(ジャパニーズレストラン)でウェイトレスとして働くなど、それで生計を立てていました。
そんな折、私が住んでいたシェアハウスのオーナーが、こんな話をくれました。
「ナナエ!私の友達が働いているカフェが、バリスタを探しているみたい。すごく遠いけど、面接行きたい?」
もちろん、私は即答で「YES!!」
面接でちゃんとコーヒーが作れないかもしれない。でも、受けてみなければ分からない。
だから私はチャレンジする道を選びました。
面接では、ちらっと履歴書に目を通されたあと、さっそくコーヒーを作ることに。
1杯目。ラテのフロスがフラットホワイトのような薄さになってしまいました。
オーナー 「……新しいマシーンって最初は難しいからさ、慣れるまで数杯つくってみてよ。」
なんて寛大なオーナーなんでしょう!!感謝しながら、前日に何十回も見た、Youtubeの動画をイメージして、作り直しました。
その後、3、4杯作ったあと、奇跡的に普通のラテを作ることができ、”You’ve got a job”と言ってもらえました。どうしても緊急でバリスタが必要だったという状況も重なったのが、ラッキーでした。
タイミングとご縁は大事!
心からそんなことを感じたきっかけになりました。
こうして、新米バリスタとしての生活が始まりました。
そのカフェは、家からとても遠いところにあり、朝4時半に起きる生活でしたが、それでも体の疲れより、バリスタとしての技術や知識が足りていないことの方が、もっと大変でした。
いくら習った通りに作っても、美味しくならない。
毎回同じように、お客様に出せるコーヒーが作れなかった私は、いつクビになるかも分からない状況の中、昼休憩も忘れてひたすらコーヒーを作り続けました。自分が休みの日には、無給であることにも関わらず他のバリスタが作っているところを見せてもらいに通いました。
そんな私を奮い立たせたのは、美味しいコーヒーをお客様に出せない悔しさと申し訳なさでいっぱいの気持ちでした。
そんな中、偶然、Go豪メルボルンの下山さんの記事を発見します。
こんなに素晴らしい日本人バリスタがメルボルンにいたなんて!技術をぜひ習いたい!しかも日本語で教えてもらえるなんて、本当にありがたい!
藁にもすがる思いで、下山さんにメールを送り、さっそくレッスンを受けに行くことにしました。
下山さんのレッスンでは、他のバリスタスクールや基本的なマニュアル本では教えてくれなかった、でも、美味しいコーヒーを淹れるためには必ず必要な細かな技術を、しっかりと学ぶことができました。何グラムの豆を、どのようにバスケットに入れるのか。豆によって、どのようにグラインダーを調整するのか。店が忙しくなった時に効率よく二杯分のミルクを同時に温める方法。もちろん、ラテアートの技術。それだけでなく、プロのバリスタとしてのモチベーションや働き方まで、沢山吸収することができました。
次の日から、カフェのマシーンと豆で、習った知識を参考に、試行錯誤する日々が始まりました。毎回豆のグラムを計り、味を確かめる。エスプレッソショットの秒数を計り、色を見てグラインダーを調整してみる。きめ細やかなミルクを作るために、スチームワンドとピッチャーの角度を工夫してみる。様々な視点からのアプローチを続けていくうちに、プロのバリスタとしての意識も高まっていくことに気がつきました。
その後、練習の成果が少しずつ実り、とうとう結果が出始めるのです。
初めは「君のせいで、何人かお客様を失った」と言われたのが、常連のお客様から「君が作るコーヒー、美味しいよ。何曜日に働いてるの?」と聞いてもらえるまでになりました。予期していなかった言葉だけに、本当に嬉しくて、その日はエスプレッソマシーンに隠れて泣きました。
すっかりバリスタという仕事と、メルボルンのカフェ文化に夢中になっていた私は、さらに自分の成長のために、メルボルンに残ることを決意しました。そのために3か月間のWWOOF(ファーム等で労働と引き換えに宿泊と食事が提供される。セカンドワーキングホリデービザを取得するための条件のうちの1つ)生活を経て、無事セカンドワーキングホリデービザを取得。いよいよバリスタNanaeとしての、新生活の始まりです。
+仕事探し
駅を決めて、下車してから通りを歩く間に、目に入ったカフェに履歴書を配っていく。募集してないと言われても、「履歴書だけでも置いていっても良いですか?」と粘ってみる。数ヶ月のバリスタ経験と、ラテアートチャンピオンの下山さんのレッスンを受けた、という経歴のおかげか、渡した履歴書のうち2割はレスポンスが返ってくるようになりました。それでも、1年目のレスポンスゼロに比べれば大きな進歩です!!!
こうして、今現在、私が働いているカフェに出会いました。
+働く
最初はウェイトレス業務からのスタートで、空いた時間にコーヒーを少しだけ作らせてもらったり、ラッシュ時にはヘッドバリスタのサポートに入りました。違うマシーンと豆に触れられ、何人かのスキルのあるバリスタと一緒に働けて、技術を見られることがとても刺激的でした。
また、ウェイトレスとして常にお客様に気を配り、先回りをしたサービスを心がけました。
当たり前のことですが、お客様がドアから入ってきたら笑顔で「Hi How are you?」と挨拶。常連のお客様の名前と注文内容は覚える。お水が空になっていないかをチェックする。2杯目のコーヒーを注文したいタイミングを見計らう。おススメを聞かれたときに、その方に合ったメニューを紹介できるよう、実際に料理を食べておく。
またオーストラリアでは、日本のとても礼儀正しい接客とは少し違い、お客様もカフェスタッフも会話を楽しんでいます。「いい天気だね!今日は何か予定あるの?」「昨日のメルボルンカップ観た?」食事や飲み終わった食器を下げる時には「味はいかがでしたか?」そして、帰りぎわには「Have a nice day!」。これが、オーストラリアのホスピタリティです。初めは精一杯の笑顔でにこにこしているだけしかできませんでしたが、フレンドリーなメルボルンの人たちの魅力に惹き込まれ、今では何も会話しない方が寂しささえ感じます。
そうして毎日が忙しく過ぎていく中、突然、ヘッドバリスタの子が、店を辞めることになりました。必然的に、私がコーヒーを作れる時間も増えてきました。作るコーヒーの数が増えた分、新たな課題も生まれます。
忙しい日には1日300杯にもなる、次々と流れてくるコーヒーのオーダー。一定のクオリティを保ったまま、いかに素早く作れるか。高い集中力と技術力が必要です。また、コーヒーの知識を得るために、仕事以外でもたくさんのカフェを訪れ、焙煎やフィルターコーヒーのセミナー等にも積極的に参加しました。
少しずつ、お客様からも「彼女が作るコーヒー、ベストだね」と言ってもらえるようになっていました。
そんなある日、私が作ったコーヒーを飲んだオーナーが一言。
「ナナエのコーヒー、今まで僕が飲んだコーヒーの中で一番美味しいよ!君がメインでお客様にコーヒーを作ってほしい」
こうして、私はヘッドバリスタになりました。
今も、カフェのオーナーやスタッフたちは、信頼して私にコーヒーを作らせてくれています。
より美味しいコーヒーを作りたいという思いは、新米バリスタの頃から何も変わっていません。けれど今は、目の前に私のコーヒーを楽しんでくださるお客様がいて、カフェのオーナーやスタッフがいるからこそ、私はこうしてコーヒーを作ることができる。ヘッドバリスタとしての責任と感謝の気持ちとともに、知れば知るほど奥深いコーヒーへの探究心は尽きることはありません。
だから私は、このバリスタという仕事が大好きです。
+最後に
こんな体験をした私から、これからメルボルンでバリスタになろうと考えている方へ。
バリスタとしての経験がなくても、
きっとチームワーク力でカバーできるかもしれません。
ネイティブのように英語が話せなくても、
日本人だからこその細やかさと気配りで補えるかもしれません。
ハンデがあるからこそ、
一生懸命さが伝わるかもしれません。
私だったら、仕事ができてもぶっきらぼうなスタッフより、
ちょっとドジでも笑顔が素敵なスタッフを応援したくなります。
メルボルンのバリスタ求人には“Experience is essential(要経験)”と同じように、必ず書いてある条件があります。
“Must have a passion for coffee”
(コーヒーへの情熱がなければならない)
どうなるかは、やってみなければわからない!!
Let’s try and Good Luck!!
Nanae
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□店舗情報
Cafe : Ernest V
Head Barista : Nanae Kobayashi
Address : 432 Glen Huntly Rd, Elsternwick VIC 3185
Business hours 7:00-17:00
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次回へのんびり続く。
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