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若手クリエーターの新たな挑戦! 彫刻家 菅原隆彦

2月2,3日にCollingwoodで展示会を開催!

2013年1月23日掲載

 

シティーからわずか10分足らずのCollingwoodでアトリエをかまえ製作活動を始めた若手彫刻作家  菅原隆彦さんにインタビューしてきました。
イタリアのミラノで生まれ、彫刻家は彼で4代目という芸術家一家に生まれ育った菅原さんのメルボルンでの制作活動についてじっくりお伺いします!

彫刻作家 菅原隆彦 33歳 横浜出身 


プロフィール
1979年4月 イタリア ミラノ生まれ
2000年4月 東北芸術工科大学 彫刻家入学
2005年4月 ベルリン芸術大学ゲストスチューデントとして留学
2007年3月 東北芸術工科大学 大学院彫刻科 修了
2012年6月 渡豪 

主な受賞暦
2002.10 自由美術展、佳作賞受賞(東京都美術館)
2003.10 自由美術展、佳作賞、現代美術館奨励賞、新人賞、受賞(東京都美術館)
2006.10 自由美術展、自由美術賞受賞
2007.  9 第43回神奈川県美術展 特選受賞


主なグループ展
2001年10月 自由美術展 初入選(東京美術館)
2003年4月 MIXED SANDWITCH展(ギャラリーOM)新横浜 
2003年8月 菅原隆彦、柿原岳士 二人展(ギャラリーHIGURE) 東京 谷中
2004年6月 自由美術新人賞受賞者展(日本画廊)
2004年10月   自由美術展 新会員推挙(東京美術館)
2005年10月    自由美術展出展(東京都美術館)
2006年6月 大分アジア彫刻展入選
2007年10月 自由美術展出展(国立新美術館)
2007年10月 第3回現代彫刻美術館 野外彫刻選抜展
2008年5月 第19回宮崎国際現代彫刻、航空展
2008年9月 第44回神奈川県美術展 入選
2008年10月 自由美術展出展(国立新美術館)
2009年6月 第20回宮崎国際現代彫刻、航空展
2009年9月 第45回神奈川県美術展 入選
2009年10月 アートカクテルin笠間

パブリックコレクション
東北芸術工科大学 山形
タイムズピーススクエア 大阪


ー渡豪されたばかりの菅原さんですが、メルボルンの印象はいかがですか?

アートが盛んな場所と聞き、オーストラリアの中でもメルボルンという場所を選びました。人もフレンドリーで住みやすい場所だと感じています。これから1年余り滞在予定ですが、出来ればもっとオーストラリアにいて色々な場所で作品制作や発表をしていきたいと考えています。
メルボルンのお気に入りの場所は郊外ですね。どちらかというと人混みが苦手で都会よりも 自然の多い田舎が好きです。

 

タイトル:Colony’03 サイズ:195x230x150 素材:鉄

 

ー彫刻を始めたきっかけを教えて下さい。

もともと家族が芸術系で彫刻家は僕で4代目になります。父が石彫家(菅原二郎)でおじいさん(菅原安男)が木彫家その父(菅原大二郎)は仏師だったそうです。母は日本画家で、おじいさん(森田曠平)も日本画家、姉も日本画。ちなみに僕の嫁は漆芸家です。本当は彫刻家になろうなんて思っていなくて音楽を勉強したかったんです。中、高と吹奏楽部で、高校ではマーチングバンド全国大会10年連続金賞という有名校にいたので音大に行きたかったんです。でも楽器は吹けるけれど、ピアノがなかなか上達しなくて途中で挫折しました。
というわけで、最初はデザイン科に行こうと勉強していたのですが、これまた平面構成が苦手で浪人2年目!彫刻を勉強し、山形の東北芸術工科大学の彫刻科に入学しました。
おじいさんが木彫、父が石彫、ちょっと反発があったんでしょうね、絶対同じ素材はやらない!と思い僕は鉄を使い作品を作っていました。写真にある作品は朝6時前から大学に行き守衛さんに早すぎると怒られながらも、鍵を開けてくれて、そんな日々が8ヶ月続き重さ2tの作品が完成しました。とにかく大学では鉄の実習室に朝から晩まで毎日制作していましたね。

タイトル:Colony’08-2 サイズ:195x140x158 素材:鉄

 

 

タイトル:Colony’08-4 サイズ:235x150x34 素材:鉄

 

ーベルリン芸術大学ではどのようなことを学ばれたのですか?また苦労した点はどこでしたか?

2005年4月にベルリン芸術大学へゲストスチューデントとして約半年間、与えられたアトリエで製作活動をしました。材料があって当たり前の日本での環境に比べ、机一つに椅子一つだけのガランとした場所で素材集めから始めた製作活動はとても大変でした。
またドイツ語の習得のため約3ヶ月語学学校にも通いましたが、コミュニケーションの部分でも苦労が多かったです。当初は父の友人の紹介で同じ大学に通うドイツ人の学生と同居していましたし、生活の面でも語学は必須ですよね。苦労したことはたくさんありましたが、結果としてとても良い経験になったと感じています。


ー日本ではどのような活動をされていましたか?

大学在学中から公募展やグループ展を多数、山形や東京でしていました。卒業後、茨城県に引っ越しそこでも友達とアトリエを借りて制作をしていました。アルバイト(鋼材屋さん&スクラップ)が終わったら夕方からアトリエで作業という日々が続きました。地元でも「雨引の里と彫刻」という野外彫刻展に声をかけて頂き参加させて頂きました。海外ではUK Japan Awardというコンペに出展し一時審査まで残りました。

 

ー尊敬する、または好きな彫刻家はいますか?

好きな作家は何人かいますが、その中でも鉄の彫刻家Antony Gormleyが好きです。代表作はイギリスのニューキャッスルにある「Engel of the North」という巨大な人の形をしている作品です。
学生時代から知っている世界でも有名な作家ですが、私と同じように鉄を扱うアーティストで作品のダイナミックさや鉄の扱い方がとても好きです。

 

 

アントニー・ゴームリー Antony Gormley
1950年 イギリス・ロンドン生まれ、ロンドン在住。
ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで考古学、人類学、美術史の学位を取得した後、3年間インド、スリランカで仏教を学び、帰国後ゴールドスミス・カレッジ等の美術大学で本格的に彫刻を学ぶ。1994年ターナー賞受賞。1999年サウス・バンク賞ビジュアル・アート部門、2007年にはバーンハード・ヘイリガー賞彫刻部門など、名だたる美術賞を受賞。1997年には大英帝国勲章(OBE)を授与される。

 

CollingwoodにあるアトリエYarra Sculpture Galleryにて

 

 

 

白い壁に囲まれ、高い天井を持つこのアトリエは開放感がありとても静かな場所です。

 

 

ーこのアトリエではどのような活動をされていますか?

メルボルンに来てギャラリー巡りをしていたら、たまたまこのギャラリーを見つけて、雰囲気や環境も気に入りました。またその日がちょうどオープニングパーティで、すぐにオーナーのJennにこのギャラリーで作品を作って展覧会をしたいと伝え今回展示が出来る事になりました。
現在は2月に控えている展示で発表するための作品を制作しています。今回の作品はとても時間がかかるので週末も含めほぼ毎日このアトリエに来て制作しています。

ー現在制作されているのはどのような作品ですか?

素材は木のスティック(マッチ棒)みたいな棒を使っています。元々連続的に重なったり、集結して形が出来ていく事に興味があります。学生時代にマーチングバンドをしていたのですが、これは一人で成り立つものではなく50人、60人という大人数が整列し重なったり連なったりすることを繰り返す中で全体の形が出来上がっていくのです。この経験が今の作品にもつながっていると思います。
ちなみに正確に数えてはいませんが、今回の作品ではおおよそ26000本近い棒を使用していると思います。
手のひらに収まるほどの小さな棒をひたすら組み立てていく作業は気が遠くなりますが、アトリエで作業をしているとあっという間に時間が経っていきます。たぶん黙々と作業をすること自体も自分にあっているのだと思います。

 

ー彫刻の魅力とは隆彦さんにとってどんなところでしょうか?

色々な素材や道具を使う制作過程の中で、自分が意図していなかった形が生まれた瞬間が好きですね。新しい発見があった時です。それはつまり素材の持っているそれぞれの特徴で、圧力や熱を与えたりして起こるちょっとした形の変化で作品自体の見え方が変わってくるんです。そういった素材そのものとのやりとり、対話が魅力的ですね。

 

菅原隆彦さんの展示情報

日時:2013年2月2日(土)、3日(日) 12:00-5:00pm ※2月2日(土) 4:00-7:00 オープニングパーティー
場所:Collingwood stationから、おそよ徒歩2分のとこにあるYarra Sculpture Gallery  http://www.yarrasculpturegallery.com.au/
Yarra Sculpture Gallery
117 Vere St
Abbotsford, Vic 3067
料金:無料
今回は6人の作家が各自与えられたスペースで独自のアートを表現しています。

 

ー最後に今年の目標、抱負などがあれば教えて下さい。

今回の展覧会をきっかけにまた、どこかでアトリエを見付て多数の展覧会に参加し人とのネットワークを広げる事ですね。また2月に行われる展示で多くの方とお会いできることを楽しみにしています!

菅原隆彦さんのインフォーメーションはこちら 


Text & Interview Noe Fujimoto

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