インタビューinterview

グルメgourmet

メルバ(Melba)和食シェフ 桂川 和也さん インタビュー

ラングハム・ホテルの寿司職人!

2010年7月13日掲載

 




[プロフィール]
桂川和也
岐阜県出身。ラングハム・ホテル(The Langham Hotel)のレストラン、メルバ(Melba)で和食を担当している。



インタビュアー:中村紀子



--シェフになるまでを教えて下さい。

料理をやりたいって気持ちが強かったので 18歳 の時に岐阜にある調理学校で1年勉強しました。高校は 途中でリタイヤしたので行ってないです。田舎なんで世間体を考えれば、親はみんなのように高校に行って欲しかったと思います。

大抵は学校が地元での働き先を見つけてくれます。しかし僕は地元に帰るつもりは無かったので、卒業後は自分で仕事を探しました。
居酒屋で1年半、ケーキ屋で1年働きました。ケーキは完成したものではなく作る行程に興味があり、自分の経験を積むために働きました。

25歳まで調理師会に所属していました。調理師会ではシェフを派遣・斡旋してくれます。どこの県にもありますよ。ここを通して色々な店をハシゴしました。僕が若い頃はバブルでぽんぽんと店がオープンしていました。新しい店で働いて、3ヶ月もすると他の店に行って働きました。

--若い頃は大変でしたか?

25歳位までは大変でしたね。 教えてはくれないので、働きだしてから現場で技術を盗みます。
料理の世界では上から、板長、煮方(副板長)、板前(刺身)、わきいた(下処理)、焼き方、揚げ方がというのがあります。経験を積むに従い、上の方に上がっていきます。僕はわりと新しい職場に入るとぽんぽんと上がっていくタイプです。

 


--どのようにして上へ上がって行きましたか?

始めのうちは魚さえ触らせてはくれません。僕の場合は認められるために、朝早めに行って魚をさばいておきます。前日に、何が次の日に必要なのかを親方に探りを入れておくんです。そして、朝早く来て魚を触っていいかどうか聞いておきます。そういうところから認められていくんです。
若い人が主に下仕事(魚をさばくこと)をします。大きなホテルでは量が多いので、板前は基本的に下処理はしないですね。お客の来る時間に合わせてさばいておきます。


--オーストラリアに来たきっかけを教えて下さい。

5年間で日本では色々な所に行き、その後地元に帰りました。30歳までは地元の大きなホテルで働きました。 そのホテルのレストランの親方が、昔、オーストラリアで働いていたんです。1回ぐらい海外の料理を見てみたい、文化を学びたいという気持ちが強かったので、親方からメルボルンの話を聞くうち、どんどんと気持ちが傾いていきました。僕は和食だからと意固地にはなりたくなかった。
訳も分からないままオーストラリアに来ましたが、ある人の紹介でキュウ(Kew) にあるオチャ(Ocha)というレストランで、ビジネスビザで働き始めました。

 

 

--オーストラリアで和食を出すときにどのように工夫していますか?

日本のように料理を出してもオーストラリア人は喜びません。食べれば美味しいんですけど、日本人とオーストラリア人が喜ぶプレゼンテーションは違います。だから、料理の基本は同じなんですけど、プレゼンテーションを変える。サラダを付けたり、丸いプレートに盛ったり、取り分けが出来るようにしたり・・・。日本人から見ると洋風が混じった感じでも、オーストラリア人は先入観がないので、おいしかったらそれで良いんです。

--ラングハム・ホテルで働き出したきっかけを教えて下さい。

キュウのオチャで働いた後、2年ぐらい違うレストランで働きました。そこのオーナーの紹介でラングハム・ホテルで働きだしました。寿司場は僕が来てからスタートしました。うちのシェフは日本料理にも詳しくて、研修で日本にも行ったこともあります。

-- 仕事内容を教えて下さい。

うちのレストランはビュッフェなので自分が和食全般を受け持っています。ビュッフェでは寿司をお客さんの前で握ります。 オージーのお客さんには説明しながら握ります。寿司を握るパフォーマンスは、お客さんは喜んでくれます。 ネタはマグロ、サーモン、はまち、うなぎ、ホタテなどです。
うちは総合レストランなので和食は20%ぐらいです。うちのいい所は多国籍の料理があるので、どこの国からの友達と来ても誰でも食べれることです。
他にはファンクションで料理をします。それなりのプレゼンテーションで、ちゃんとシェフが立ちます。 VIPには天ぷらを揚げたりもします。

 



--メルボルンでの生活はいかがですか?

メルボルンはもう7年目です。2年前までは良かったですね。ここ2年は物価が上がって大変です。来たときは家賃が上がるなんてことは無かったですね。もうここ最近は更新時期になると必ず上がりますよね。普通にスーパーで買い物をしてても前よりも高いですよ。

--メルボルンにこれからも住む予定ですか?

将来的に日本に帰る前提ですね。でも、せっかく来たオーストラリアなので 自分で夢描いたことは、やっていきたいです。子どもが来年中学校になるので、どんどん日本に帰りづらくなりますね。 子どもは現地校に通っています。僕は自分の子どもに対しては基本的に放任主義です。 しかし自分が長男で、実家が田舎なので、やはり地元に帰らないといけないなと思います。両親にある程度は育ててもらったお礼をしないと申し訳ないですから。




 

--仕事面での目標はありますか。

ホテルの料理のクオリティーをキープすること。そしてそれを若い人に教えていくことです。

--個人的な夢を教えて下さい。

プライベートでの夢は自分の店を持つことですね。田舎で定食屋などで、その土地に合った店を開きたいです。リクエストに合わせて、他の国の料理も出せたらいいですね。しかし自分の店を持つという事は人のエゴですね。自分を出したいという。
今の僕はそれよりも自分で持っていない物を見たいという願望が強いです。なので今はうちのレストランで色々な国の料理が勉強出来て幸せです。

-- 最後に一言お願いします。

人に会えたことは財産。料理の味は忘れても人は忘れない。

 

-- お忙しい中ありがとうございました。

 

<取材後記>
桂川さんが料理を学ぶ事に喜びを感じられるのはとても素敵だなと思いました。ビュッフェはどの料理も美味しそうで目移りしてしまいました。色々な料理を楽しみたい方にはぜひお進めです。

ビュッフェの料金
ランチ 月曜-金曜:$49 土曜:$75 日曜:$84
ディナー 月曜-木曜:$69.90 金曜:$84.90 土曜(5.30PM-7.30PM):$84.90 土曜(8.30PM-11PM):$89.90 日曜:$79.90

日により料理の内容も変わります。スペシャルデーは特別料金。


ここではマスタークラスという料理教室も開催中。
参加費:1人$120

メルバ・レストラン:http://www.melbarestaurant.com.au/index.php
マスター・クラス:http://melbourne.langhamhotels.com.au/restaurants/masterclass.htm
 

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