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ワトゥルの風 Part2(4号)

一画違いの「辛」と「幸」

学校長 美谷添久男

日本では、二十四節気の一つでもある夏至が終わり、いよいよ本格的な夏の到来を迎えたようです。こうした季節の節目をいつも大切にしてきた日本人の律儀さが、長い歴史の中で素晴らしい文化を育んできたのではないかと思います。

 さて、メル校も学期の節目となる7月を迎えました。児童生徒たちも、自分たちの掲げた児童生徒会スローガンの願いや、個々に決めた努力目標に向けて、一歩一歩着実に歩みを進めています。そんなメル校生たちの毎日の姿を見ていて、「辛」と「幸」という漢字が思い浮かんできました。「辛」は「からい」とも読みますが、「つらい」という漢字でもあります。わずか横画が一本足りないだけなのに、「辛」と「幸」では正反対のような意味で区別されてしまう漢字です。

メル校生は、その辛いことにも、果敢に挑戦している光景をよく目にします。6月を見ても、一人の児童が見事一輪車に乗れるようになりました。2年生から練習をしていましたが、5月下旬に3㍍程乗れるようになったのです。心から喜んでいる様子がよくわかりました。その距離は日を追うごとに伸びていき、今では自在に操れるようになりました。「できなかった」ことが「できるようになった」、それは、児童にとってはとても大きな自信となりました。これまで、あきらめることなく練習を重ねたことで、嬉しい結果に繋がったのです。この喜びや自信こそが言うまでもなく、「辛」という漢字に横画一本を加え「幸」に変わった瞬間だったのではないでしょうか。

私がG6に入ったとき、同じG6の仲間はみんな海外生活が長く、私とは英語の実力が格段に違っていました。当然私は英語の授業には全くついていけず、内容もほとんど理解できませんでした。宿題を出されても、自分一人でできるわけがなく、いつも父に手伝ってもらいました。みんななら、30分で終わる宿題も、私の場合は1時間も2時間もかかりました。そうなってしまうのは仕方がないことだと、自分でもわかっていましたが、自分だけできないのが悔しくて、涙を流したことも何度もありました。どんなに悔しいと思っても、自分もみんなと同じくらいできるようになりたいと願っても、結局できない自分がもどかしく、腹が立ってしまうこともありました。・・・・省略・・・・

過去にメル校で学んだ先輩たちから、学校に届けられた手紙があります。メルボルンに来た当初の辛かった日々から、努力を重ねることで「辛」から「幸」へと夢をもって巣立っていった平成23年度卒業生の手紙の一部を紹介します。(メル校ホームページ メル校出身者の声―⑧より抜粋)

 

私がG6に入ったとき、同じG6の仲間はみんな海外生活が長く、私とは英語の実力が格段に違っていました。当然私は英語の授業には全くついていけず、内容もほとんど理解できませんでした。宿題を出されても、自分一人でできるわけがなく、いつも父に手伝ってもらいました。みんななら、30分で終わる宿題も、私の場合は1時間も2時間もかかりました。そうなってしまうのは仕方がないことだと、自分でもわかっていましたが、自分だけできないのが悔しくて、涙を流したことも何度もありました。どんなに悔しいと思っても、自分もみんなと同じくらいできるようになりたいと願っても、結局できない自分がもどかしく、腹が立ってしまうこともありました。・・・・省略・・・・

 

この卒業生は、このまま終わったわけでなく、メル校在学中に高い英語力を身につけ、現在は進学先の高等学校においてトップクラスで学んでいると聞いています。

でも、この先輩の立場になってみれば、だれでも逃げ出したくなると思います。しかし、気概をもって、自分の夢の実現に向けて踏み出した一歩は、いまでもこの先輩の心の中に強く記されていることでしょう。

過去にも今も変わりなく、メル校の児童生徒たちは、ねばり強く取り組むことを通して、「辛」という字に横画を一本加えた「幸」を手に入れているのです。メル校教職員は、こうした子どもたちの日々の努力が成果となって表れるまで、今後においても誠意と情熱をもって指導の充実を図っていきます。

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