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Cafenatics

歴史とコーヒーを味わう午後。

 
 毎日くるくると動きまわって働いて、気がつけば今日も陽が落ちて行くのだ。どこかに行く時間なんてない。カフェでリラックス?街の喧騒にもまれながら忙しないカフェでコーヒーを飲むのもなんだか落ち着かないじゃない。でも、それでもどこにも行かないよりは・・・。そんなことを考えながら今日も街を歩いていた。

 広くはない道幅のフリンダース・レーン(Flinders Lane)。一日中、人々があふれていて活気がある。活気がありすぎて、少し静かな場所を求めている時にはちょっと、なんて思ってしまうかも。ここも、あそこのカフェも今日の気分じゃない、って選り好みして歩き続けたら周囲が少し静かになってきた。
 
 
 
 大きく開かれたエントランスがあまりにも唐突に現れたので、つい通り過ぎそうになる。高いビルディングの間にある古めかしい荘厳な雰囲気の建物の一角。カフェがあるなんて思わなかった。
 
  
 
 「Cafenatics」というカフェは少しの照明だけを灯し、店内は少し薄暗い。けれども、バックヤードが見える窓から射し込む自然光とのコントラストがカフェの柔らかい雰囲気を創りあげている。すぐ隣には高層ビルディングが連なっているのに、「TAVISTOCK HOUSE」と書かれたその古い建物とそこに入っているカフェはまるで気にすることなく、街の風景に馴染む大きな絵画となって彩りをそえている。メルボルンという街は古いものと新しいものが共存できる街なのだと、今さらに思う。ここなら落ち着けそうだ。

 カウンターの前を通り、バックヤードに足を踏み入れる。木の板で囲まれた空間にツートーンの素敵なテーブルたち映える。見上げると、そびえ立つ高層ビルディングに切り取られた空がそこにあった。小さな空間から見上げる小さい、けれどもかえって存在を強調された空。そして、自分の存在も確かめるように深呼吸をしたのは自然なことだった。
 
  
 
 隣接した赤レンガの建物の窓に、一見落書きのように記されたカフェのメニューや、席で手渡された紙袋の形をしたメニュー。何もかもが気取らずに、気持ちを和ませてくれる演出に感謝。自分の中に張られた糸が少し、緩む気がした。
 
 
TAVISTOCK HOUSE はビクトリア州の文化遺産。
ファサードにはアール・ヌーヴォー様式の装飾が施されている。
 
 
 運ばれてきたコーヒーを飲みながら後ろ姿の建物を眺めていると、「TAVISTOCK HOUSE」は1850年に建設されたものだとスタッフが話してくれた。メルボルンでもとても古い建物のひとつで、アール・ヌーヴォーとエドワード、ふたつの様式を併せ持った建築物として、ビクトリア州の文化遺産に登録されているという。
 
 
 
都会の空の下で深呼吸して、コーヒーを。
 
 
 メルボルンのあるビクトリア州がニュー・サウス・ウェールズ州から独立したのは1851年であるから、ゴールドラッシュの時代から、この建物はメルボルンの変遷をずっと見つめてきたのだ。メルボルンは、人間は、いい方向へ変わっているのかしら、急ぎすぎてないかしら?ふと、物言わぬ目撃者に問いかけたくなった。

 コーヒーを手に空を見上げながらもう少しここでゆっくり過ごしてもいいかな、と思う。
 
 
 
 
『CafenaticsFlinders Lane

住所/387 Flinders Lane
Melbourne 3000 Victoria, Australia
電話番号/(03) 9614 0995
営業時間/月- 金 AM6:30 - PM5:00頃まで

 

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