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ワトルの風 Part2(9号)

共通する二つの指導

学校長 美谷添久男

 

 昨年度、「生き方教室」の講師として、三味線師範である三木晶江さんをお招きいたしました。このご縁を期に、10丁もの三味線をご寄付いただいた上に、その指導を依頼したところ、快く引き受けていただきました。そして、10月からの毎週水曜日、音楽の授業と三味線部・クラブの指導に来ていただいております。

三木さんが学校に到着されるのは、必ず指導時刻の40分前です。さっと音楽室に入り、三味線の調律と用具の点検を行われます。授業の始まる頃には、音合わせを終えて奏でるばかりに整えられています。三木さんが子どもへの指導で大切にされることは、興味関心を失わせない事だそうです。もちろん子どもたちにも音の合わせ方は指導されていますが、初心者である子どもたちには簡単に調律はできません。また、礼節を重んじるあまり、三味線嫌いになってしまうことのないように配慮され、親しむことから好きになり、もっとやりたいという段階に来たときこそ、はじめて三味線の礼節に触れる指導を考えていると話されています。そのために、早くから来校され、限られた時間の中で、児童生徒の学ぼうとする意欲をいつも大切にされ準備を進めておられます。

さて、11月に中学部の職場体験学習が行われました。今年も保育士として、現地校プレップ児(年長児)に、遊びなどを教える体験を通して、職業観について考えさせる機会としました。その活動において、三木さんと同じように、幼児たちの興味関心や意欲を大切にした取り組みを生徒自身の手によって考えました。

当日、生徒たちは、準備してきた小箱や遊びの手順を書いた模造紙など、様々な小道具を持って幼児たちと対面しました。無邪気な子どもたちの視線は、一斉に生徒たちに注がれます。メル校生も穏やかな笑顔で応えています。この笑顔に、現地校の子どもたちの表情にも安堵感が広がったようでした。まだ、互いに言葉を交わしてはいない中で、すでにメル校生の笑顔は子どもたちの心を和ませ、安心して活動できるという意欲をかき立てるには十分でした。

次に生徒たちが考えてきたことは、子どもの目線に立った、アクティビティーの数々でした。メル校のプレップの子たちにも協力を依頼して、年齢にふさわしい安全性を考えたゲームの工夫に力を入れていたことです。子どもたちの「やってみたい」「もっとやりたい」という意欲を引き出すためには、危険を伴うものや簡単すぎるものは、興味関心が失せてしまうことを予想して遊びを工夫してきました。よく考えていたと思いました。

そして、もう一つは、やる気を促す幼児への言葉かけでした。アクティビティーに夢中になって取り組んでいる子どもたちに、短い言葉で励ましたり、一緒になって喜んだりしながら徐々に自信をもたせ、一人でもできるように教えていました。アドバイスによって「やりかたがわかる」「これならできる」となれば、自ら挑戦していくのが子どもです。

今回の職場体験学習から、生徒たちの見通しをもった準備や子どもたちの興味関心を大切にした取り組みは、保育士としての素養を十分に発揮してくれたと感じました。帰校してからの生徒の反省の中には、難しい言葉を使うと通じないことや、自ら手本を見せなければ子どもたちは理解してくれないことなど、教えることの難しさと平素この職業に携わっている方へ尊敬の念を強くしたようでした。

メル校には、全学年を通して様々な体験学習が教育課程に位置づけられていますが、将来にわたって生きる力を育んでいくためにも、オーストラリアという環境を十分に活かし、充実した体験学習にしていきたいと考えています。私たち教師も、児童生徒の学ぼうとする意欲を十分に引き出せるように、今後も「誠意」と「情熱」をもって教育活動の改善に努めて参りたいと思います。

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