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ワトゥルの風 Part2(9月号)

あっぱれ『ゆとり世代』

学校長 美谷添久男

 

 街路樹にあるプラムツリーが満開となり、メルボルンにも春を感じさせる季節となってまいりました。

 学校では冬休みも終わり、校内には子どもたちの活気のある声が響き渡るようになりました。今はメル校デーへ向け、全校をあげて発表の準備に余念のないところです。

 

 さて、世界が熱狂したワールドカップサッカーは、ドイツの優勝で幕を閉じました。日本は、残念ながら予選で敗退したわけですが、日本国民に大きな感動を与えてくれた選手のみなさんの活躍やこれまでに携わってきた多くのスタッフの方々には敬意を表したいと思います。

 日本代表が初出場を果たした1998年のフランス大会以前は、アジアの壁すら突破することができず、いつも予選で敗退していました。しかし、若い力の台頭により、今ではこの大会の常連国となり、5大会連続出場というすばらしい成果を収めるまでになってきました。

 同様に『なでしこジャパン』と呼ばれる女子サッカーにおいても、大きな外国選手に力負けすることなく、世界の頂点にまで上り詰めていきました。この若い選手たちの、計り知れぬ底力にはいつも驚かされるばかりです。

 これは、サッカーの世界に限ったことではありません。他のスポーツや文化的な活動においても言葉の壁を越えて、世界に出て活躍している若い人たちが沢山いるということです。

 今年の冬季ソチオリンピックにおいても、メダルを獲得した中学生や高校生がいました。野球の本場であるアメリカの大リーグで活躍する選手、ラグビーの超一流国であるオーストラリアのチームで力を伸ばしている堀江翔太選手をはじめ、海を渡る選手が次々に出てきています。クラシックバレエやピアノなど音楽の世界でも、高い表現力が世界でも認められるようになってきています。

 まだまだ、卓球、水泳、柔道、ゴルフ・・・・など数え上げたらきりがありません。

 

 この素晴らしい活躍をする若い世代の小中学校時代を紐解いてみると、土、日曜日が休日となって過ごしてきた時代です。いわゆる、学校五日制が導入されて、世間ではゆとり教育(ゆるみ教育)とか、ゆとり世代などと揶揄され、教育界に対しても、多くの批判的な意見も寄せられ話題となった年齢層の人たちです。

 学校の教科では、【生活科】や【総合的な学習】も行われるようになり、自分から課題を見つけ、よりよく問題を解決する力を養い、自己の生き方を考えることができるようなカリキュラムも加味されました。

 さらに地域社会では、指導者の充実も相まって、休日には、子どもたちも積極的に地域クラブに加入し、スポーツ活動や文化的な活動、ボランティア的な活動に参加できる機会も増えてきた時代です。

 このような背景の中で、学校と地域社会とが一体となって学習活動を充実させたことで、ゆとり世代と揶揄されながらも、子どもたちは様々なチャンスを活かし、逞しく成長していきました。そして、過去に一度も為し得なかった世界への扉を、いとも簡単に開いていく力を身につけていったのです。

 平成4年9月から学校5日制の一部が導入されたとき、批判はあっても、これほどの結果を予想できた人がどれほどいたでしょう。若い方たちの適応能力の高さや行動力には脱帽するばかりです。

 

 実は、メル校で学んだ多くの先輩たちも、前出の若者たちと同じ世代です。その先輩たちは、海外生活における貴重な体験を通して蓄えた力を、日本国内にとどまらず、海外でも多岐にわたる分野で能力を発揮してくれています。

 今後も、若い人たちが活躍する場は地球規模で広がり、一層加速していくことが予想されます。メル校としても、こうした社会の動向を見据え、小中学校期に必要な体験的な活動を積極的に仕組み、将来生きて働く力となるよう進めているところです。

 ゆとり世代が成し遂げてきたように、メル校における日々の学習活動が、子どもたち一人ひとりの選択肢を広げ、将来描いている夢に近づけられるよう、誠意と情熱をもって学校経営に尽力していきたいと思います。

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