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ワトゥルの風 Part2(最終号)

「未来を託す」
                                                美谷添久男

メル校のめざす姿を「自学自治」と掲げ、3つの重点課題に沿って、全職員が一丸となって教育活動を進めて参りました。児童生徒たちは、その期待に応え着実に力を付け、校内はもとより、転出校や進学先の学校で活躍している様子が伝えられてきます。メル校で学んだ子どもたちの将来の選択肢は、今、確実に広がりつつあると手応えを感じています。そして、日本の将来の発展に寄与できる立派な人財(人材でなく)として、未来を託すにふさわしい子どもたちに成長していると確信することができました。
今年度の中学部卒業生についても、第一志望校の難関を突破して進学先を決めてくれました。まずもって合格を喜びたいと思います。おめでとう!
また、他の学年においても、発達段階に応じた学力の定着はもちろんのこと、仲間からも信頼される姿や目標をもって達成しようと努力する姿など随所で見ることができました。どの子も、メル校を愛し、誇りをもって生活することで、だれもが過ごしやすい学校を創りあげてくれたと思っています。
しかし、ここに至るにはすべてが順調に来たわけではありませんでした。その陰では、課題に対して納得がいかないことで悔し涙を流している姿をしばしば見ることがありました。手を差し延べることはできませんでしたが、子どもたちはよく耐えて克服してきました。自ら学ぶ力、自分の生き方を決める力、自分を高める力など「自学自治」の力を身につけてきた児童生徒たちを誇りに思います。
また、この学校を選んでいただいた保護者の皆様には感謝するばかりです。皆様の協力により児童生徒数が増加したことで、来年度は文部科学省からの派遣教員も1名増員されるという大きな成果も生まれてきました。ありがとうございました。

さて、このように成長した子どもたちは、さらに不確実で不透明な21世紀の世界を生きていかなければなりません。力強く、信念をもって生きていってほしいと願ってやみません。そのためには、日本という国の美点を知ることによって日本の未来はひらけていくと私は考えています。
その一例を1,000年という時間を遡って少し挙げてみたいと思います。
①世界の中で1,000年以上の歴史をもった企業は皆無です。しかし、日本には7社ほどあると聞いています。500年以上の企業は120社ほど、200年となると3,000社以上あるそうです。平和を求め続けた民族の成せる技であったのかもしれません。
②日本にある神社仏閣は古くから釘を使わず、ほぞを組んで建ててきました。豊富な森林に囲まれた国であり、木材の特性を活かした建築技法は、1,000年前のヨーロッパの人々でさえ知りませんでした。
③世界最古の小説と言われる「源氏物語」は、1,000年の時を経ても、いまだに世界で読まれている、日本の誇りある文芸作品の一つです。文字を使って表現する豊富な知識に感服させられます。
④天皇誕生日のパーティーのことでした。今上天皇が125代であらせられ、神武天皇を起源とする2,700年以上にわたって、男系の子孫が皇位を継承していることをオーストラリア要人によって紹介されました。日本人でも知らないようなことを、世界の人々は興味関心を抱いていることに驚きました。

他にも、他の国とは違った歌舞伎や浄瑠璃にみる伝統芸能の継承、俳句や短歌など連綿と受け継がれている偉大な文化が歴史の中で創りあげられてきました。
また、新しい研究での成果も見事です。世界の研究者が憧れるノーベル賞受賞者は、21世紀に入ってもアメリカに次いで二番目に多いこと、さらに化学賞や物理学賞といった分野での受賞が傑出していることです。古い伝統や文化を大切にしつつ、人類が為し得なかった未知への研究も、高い志を失うことなく挑戦し続けています。

児童生徒たちに、いま理解せよということではありません。しかし、いずれかの時に、世界平和に貢献できる国家であることを他国の人たちに発信してほしいのです。そして、素晴らしい先人たちの手によって世界でも類を見ない文化を築き上げてきた国であることに誇りにもって生きてほしいと願っています。

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