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大会を盛り上げた2選手の紹介、そしてFerreroが引退表明

どうも、週2回の更新も今回が最後です。
今までも2回更新しても、1回目の更新時にお知らせしないから曜日を決めずに掲載していたのですよね。今回は珍しく事前に分かったので、読んで下さる方も多いといいですね。よろしくお願いします。
今回のコラムでは、US OPENを盛り上げた2選手、そしてRoddickに次いで、引退を発表したスペインのJuan Carlos Ferreroについてお話しします。


ということでまずは、今大会を振り返って特筆すべき2選手を紹介しましょう。
今回紹介するのは、準々決勝で死闘を繰り広げた、Janko Tipsarevic とDavid Ferrer。準々決勝の試合は4時間31分の文字通り死闘で、Ferrerが6-3, 6-7 (5), 2-6, 6-3, 7-6 (4)で勝利しました(US OPENではファイナルセットもタイブレークが行われます)。テニス選手の中では体格に恵まれたわけではない、決してボールセンスが良いとは言えない二人ですが、自分は凄く好みのテニスを展開する二人なんですよね。

Tipsarevicはセルビア出身の1984年生まれの28歳、現在世界ランキング9位、今大会は第8シードの選手です。

彼は毎年見ますが、練習中は絶対裸ですね(笑)

日本語のフォルムが好きらしく、左腕に黒、右腕に白と感じで彫っています。ちなみに、左腕のカタカナの羅列は、家族のイニシャルを彫ったものだそうですよ。

かなり前に読んだインタビューの記憶ですので間違いはあると思いますが、彼がジュニアでテニスの腕を磨いていた頃は、内紛で国が荒れていてとてもテニスが満足に出来る状態ではなく、ジュニアからプロへと変わる2000年ごろは独立運動などがあり、大変な時代だったそうです(もちろん今でも決して良いとは言えないそうですが)。セルビアのテニス選手として有名なDjokovicは戦火を逃れるのとテニスの腕を磨くためにドイツにわたり、女子のJankovicはアメリカのニック・ボロテリーテニスアカデミー(錦織圭の育ったスクールです)に渡ったりと、有望な選手が海外に渡り国内に残ったジュニアは少なかったそうです。Tipsarevicは2001年のAustralian Open Junior優勝しますが、18歳になるまでジュニアの試合とITF両方を主戦場としてツアーを回っていました。キプロスの英雄、Baghdatisもこのようにしていましたから、協会の支援を十分に受けられないテニス途上国の選手はこうして資金調達していたのでしょう。
そんな苦労人のTipsarevicの名前が知れ渡るようになったのが、2007年のWimbledon3回戦で、その年のAustralian Open準優勝者、チリのFernando Gonzalezをフルセットの末に破った試合でした。翌年のAustralian Openでは3回戦で王者Federerを4時間半のフルセット、ファイナルセット8-10まで追い込みました。2011年11月にはトップ10入り、怪我で欠場したMurrayの代わりにATP Tour Finalに出場、予選で敗れたものの、過去4連敗していた同胞のDjokovicに勝利するなど、遅咲きで現在がキャリア史上一番のテニスです。
基本的にはベースライナーですが、彼のテニスの特徴を上げるとすると、意外性を持った発想でしょうか。シングルスライン付近からサーブを打ったり(シングルスの場合サーブは基本的にはセンター寄り、離れて打つのは小さい体格でも有利に展開できるように、サーブの角度を付けるためでしょう、まあシングルスラインまで寄る選手はそうそういないです)、リターンダッシュを仕掛けたりしますね。体格から大きな武器があるわけでもない、意外性という意味では、ウクライナのDolgopolovやオーストラリアのTomicほどトリッキーなテニスではない、こうしたところが最初に地味と言った理由です。

一方のFerrerは1982年にスペイン生まれの30歳、世界ランキングは5位ですがNadalの欠場により第4シードでUS OPENに出場しています。

練習中。


今年のDjokovicとの準々決勝中。

今年のGSでは全ての大会で準々決勝まで勝ち上がり、これはオープン化以降、ナダルに次いでスペイン人としては2人目の偉業です。今季のツアーは5勝と、Federerの6勝に次ぐ2位の成績です。175センチとプロ選手の中ではかなり小柄ながら(プロフィール上では錦織圭は178センチで彼より大きい、実際178センチはないと思いますけど)、クレーコートで鍛え上げられたフィジカルの高さを活かした、拾いに拾い(スペインで活躍する日本人のダニエル太郎曰く、人生最後の一球のように拾う)、相手をコート外に追いやりオープンスペースに決めるテニスですね。いわばスペイン人らしいテニスと言いますか。現代のスピードテニスでは粘るスペインのテニスでは勝てないと言われ、MoyaやFerreroの活躍からNadal登場までの間はスペイン人の活躍は少なかったんですよね。
そんな中彼が30歳の今なぜ、キャリア史上最高のテニスを展開できるのか。それはツアー屈指のフィジカルもさることながら、リターン力の高さ。2012年のリターンゲームの勝率は、Nadal、Djokovicに次ぐツアー3位。Nadalは今年は試合数が少ないですから、38%と抜きん出ていますから今回は無視していいでしょう、するとDjokovicの33%に次ぐ第2位の32%。個人的には、現役プロの中では1番のリターン力、引退した選手を含めても彼と同等、もしくはそれ以上と言えるのはAndre Agassiでしょう。Ferrerのサーブ自体は武器と言えるほど強くないですが(それでもエースは出ますよ)、リターンゲームが素晴らしいから勝ち上がれるのです。


最後に紹介するのが、スペイン出身の2003年のFrench Open覇者であり、世界ランキング1位に上り詰めた経験もある、Juan Carlos Ferreroです。


1980年生まれの32歳、10月の地元スペインで行われる、Valencia Openでの引退を発表しました。かなりのイケメンで有名で、女性ファンは半端なく多い彼。僕の周りでも彼を好きな女性は多かったですね。
名前が似ていて紛らわしいですが、先に説明したFerrerと同じくスペインのテニス、つまりベースラインでストロークを武器に試合を組み立てるタイプですね。強力なストロークを武器に、French Openで優勝、クレーでの戦績が目立ちますが、GSすべてで準々決勝まで勝ち上がっており、コートに関係なく強さを発揮できる選手でした。2003年のUS OPENでは準優勝、この時の相手が今年の同大会で引退を発表したRoddickでした。
Ferreroのライバルとして有名なのが、こちらも今年の3月にマイアミで行われたSony Ericson Openで引退した、チリの国民的アイドル、Fernando Gonzalezでした。French Openのジュニア部門の決勝で顔合わせ、その後Ferreroの優勝した2003年のFrench Openの準々決勝ではフルセットの激戦を繰り広げるなど、数々の名勝負がありました。
2003年のUS OPEN準優勝後は初の世界ランキング1位になりますが、その後は怪我で苦しみ、2004年から2008年の5年間はATP Tourでの優勝はなく、準優勝止まりでした。2007年にはWimbledonで初の準々決勝でFedererに敗れるなどもありましたが。2009年に約6年ぶりにTour優勝を飾ると、その後のWimbledonで2年振りの準々決勝に進むなど復調の兆しが見えていました。
彼の一番の思い出は、2000年のスペインのDavis Cup初優勝だそうです。彼はこの年のAustraliaとの決勝で、現在のAustraliaチームの監督のPatrick Rafterや、Lleyton Hewittを破るなど、スペインの初優勝に大きく貢献しました。GSの優勝も思い出深いが、国を背負って戦うことの(その後の国内での反響から)凄まじさを知ったいい思い出だと語っていました。
また一人、自分のアイドルがコートを去ってしまいますね。今年のAustralian Openの予選の間に練習が終わった彼と写真が撮れたのは最高の思い出です。

サインも貰いました。



RoddickやFerroroのように、30歳を過ぎて引退もよぎりますが、Tipsarevicは28歳、Ferrerは30歳、Agassiなど35歳前後まで現役の選手はいましたし、大きな故障さえしなければ全然ツアーは回れます。さらに経験というものはどんなスポーツにおいても重要な物。Ferrer曰く、雨で中断になると若手の選手は自分の若さを過信し、仲間内としゃべったりして体を止めてしまうが、経験がつくと落ち着いてたとえ試合がその日になくても、しっかりと調整できるようになるそうです。今季のGSは確かに30歳前後のベテラン勢の活躍は多いのですよね。Federerを筆頭に、Ferrer、怪我やスランプから立ち直った選手ではMalisse、Youzhny、ランキングこそ落ちていますがGSで成績を残しているHewittなど。Roddick、Ferroroは引退してしまいましたが、これらの選手は30歳と言えどまだまだギラギラした闘志を持ち合わせていますから、引退などの質問は野暮なのでしょうね。あとまあ個人的には、ここ4,5年で自分がテニスを見始めたころに活躍していた選手の引退がとにかく増えたのですよ。やっぱり寂しいものなのですよね。もちろん引退はいつか来るものですからしょうがないですけど。たとえ主戦場が下部組織に移行したとしても、出来るだけ長く現役でいてほしいものです。これからのテニスを作り上げていく若手も重要ですが、いぶし銀のベテラン勢に目を向けるのもいいものですよ。

それではまた来週。

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