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私のソウルメイト(9)

ホテルのカフェテリアに行くと、京子が先に来て待っていた。
席に着くと、まずシャンパンが運ばれてきた。
二人で乾杯をして飲んだシャンパンはおいしかった。それを飲み終わる頃、三段のお皿と、ウエッジウッドのきれいなティーカップが来た。お皿にはサンドイッチ、スコーン、そして小さな色鮮やかなデコレーションのついた小さなケーキがのっていた。見ているだけでおなかがいっぱいになりそうだった。
最初に二人ともケーキを賞味することに熱中した。二人とももうおなか一杯で何も食べられなくなった時、私は思い切ってロビンに対する恋心を京子に打ち明けた。
京子は「その人独身なの?」と聞いたが、私ははっきり答えられなかった。
「あなた、馬鹿じゃない。それが一番大切なことだわよ。彼についてどんなことを知っているの?」と言った。
彼についてほとんど知らないと言うと、
「それじゃあ、一緒に調べてみましょうよ。面白いじゃない」と言い始めた。
私たちはホテルの従業員に電話帳を借りて調べてみた。「r.gourley」は結構珍しい名前だと思ったが、15も出てきた。もしロビンが電話番号を掲載しないように電話会社に頼んでいれば、電話帳を調べても無駄なのだが、他に方法を思いつかなった。そこで、住所を見て、お金持ちが住みそうな郊外に住んでいる人を選び出すことにした。
「この人は、ツーラックよ。それじゃあ、この人には星印をつけておくわね。」
「この人は、ダンデノング。これはアウトね。」
私より京子のほうが熱中し始めた。京子は可能性のありそうな人物の電話番号を5つ書き出して、私に見せて言った。
「さあ、これから電話かけてみなきゃいけないけれど、夜かけないとうちにいないわね。あなたにマンション探しなどを手伝ってもらったお礼がしたいと思っていたんだけど、ちょうどよかったわ。今度豪華ホテルに一泊してみましょうよ。そのホテルから電話すれば、相手にどこから電話をかけたか、知られずにすむわ。」
私は京子の計画に舌を巻いてしまった。私一人では、そんなことを思いつきもしないだろうし、たとえ思いついたにしても、それを実行する勇気がなかっただろう。
 早速次の週の火曜日、私たちは家族に二人でドライズデールにある日本風の旅館に一泊してくるからと言って、でかけた。急に旅行するなんていったものだから、アーロンは変な顔をしたが、
「ちょうど、来週の火水は仕事が入っていないのよ。京子もたまたまパートのない日だし。私の仕事っていつあきができるか分からないから、あきができたときに行こうって話になったの。」と言ったら、それ以上追求してこなかった。
二人は勿論ドライズデールなどに行かず、メルボルン市内にあるヒルトンホテルに向かった。ちょうどホテルのチェックインが始まる午後2時にホテルにつき、マネージャー自らが案内してくれた部屋はホテルのスイートだった。京子が予約してくれていたのだ。シャンデリアがある豪華な部屋は、ピンク色と茶色と黒の混じった大理石の床に、ふかふかのカーペットが敷いてあり、明るかった。いくつもの部屋があり、ベッドも皆キングサイズだった。私はマネージャーが部屋をでていくと、すぐにベッドに這い上がって、大の字になって寝てみた。
「わあー、気持ちいい!」
京子はそんな私を見て、「気に入ってもらってよかったわ」と笑った。
「それよりも、今晩どうするか、作戦をねらなくちゃ」というので、すぐにここに泊まる目的を思い出した。
「5人しかリストに載っていないけど、必ずしもこの5人のうちの一人だとは限らないわね。まあ、そのときはそのときで次の作戦をねればいいけれど。相手は私のことを知らないから、私が電話して、ロビンを電話口に出してもらうわ。そしたら、相手の声を聞いてみて。それで、相手があなたの好きなロビンかどうか分かるわ」
「ありがとう。そうしてもらえると、助かるわ」
私は少しでも彼の情報を得られるのかと思うと期待に胸がわくわくしてきた。
「相手の住所がわかったら、その家を監視して、家族構成なんかを探るのよ。いい?」
京子は緊張した顔の私に向かって、子供に言い聞かせるようにいった。いつもはそんな言い方をされると反発を感じるところだが、その日は’素直に私は黙ってうなずいた。
夜が来るまで時間があった。壁にかかっている大きなプラズマテレビで、ケーブルテレビの映画を見ると、もう外は夕暮れだった。
「このホテルのレストラン、フランス料理で有名なのよ。予約を取っているから食べに行きましょうよ」
私は苦笑いをしながら、
「あーあ、食事の相手がロビンだったら言うことがないんだけど、あなたが相手ではロマンチックな気持ちにはなれないわね」とため息混じりに言った。
フランス料理は、素晴らしかった。イセエビのクリーム煮は、特においしかった。
8時半に部屋に戻ると、すぐに電話をかける準備にとりかかった。

著作権所有者:久保田満里子’



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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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