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ある雨の夜に(最終回)

「お父さん、お母さん、ごめんなさい。私はミアさんにとても悪いことをしてしまいました。ミアさんがいじめにあって自殺をしたと言うことはお父さんも知ったようですが、実は、私もミアさんにひどいメッセージを送りました。クラスのみんなと一緒になって。そうしないと、今度は私がいじめの対象になると思ったからです。ミアさんはお母さんが日本人だったせいか、私がオーストラリアに来たばかりで英語もあまり分からなかった中学生の時、色々親切にしてくれました。でも、高校生になると普段おとなしいミアさんはいじめっ子の対象になったのです。ミアさんが皆からひどいメールを受け取り始めた時、私は彼女をかばおうとしました。すると、いじめっ子の一人に言われたの。あんたもミアにメールを送れって。私はビビってしまって、いじめっ子の言われるまま、ミアに死ねとメールを送りました。すると。ミアから『あなたまでもひどいことを言うのね。許せない』と、怒りと悲しみが入り混じったようなメールが来ました。その翌朝学校に行って、ミアが自殺したことを知りました。それからの私は毎日自責の念に悩まされました。それと同時に私もミアのようにいじめっ子のターゲットになりました。それで、ノイローゼ気味になっていた時、昨夜お父さんからミアの幽霊に出くわしたと聞き、ミアは私を許してくれないんだとはっきり意識しました。だから、私もミアの後を追うことにしました。お父さんがいじめられたら自分に言えって言ってくれたのに、黙って死ぬことになってしまって、ごめんなさい。お父さんに私もいじめっ子に加担したなんて、言えなかった。聖子より」
幸太郎は、ミアが自分の前に現れたのは、単なる偶然だと思っていた。しかしそうではなかったのだ。自分の前に現れたのは、幸太郎が聖子の父親だったからだ。そうとも知らずに結局ミアの復讐に加担することになってしまったと、後悔と悔しさで、幸太郎は泣き崩れてしまった。今度、またミアが現れたら罵倒してやろうと思っていたが、聖子の死後ミアの幽霊は二度と幸太郎の前に現れなかった。

著作権所有者:久保田満里子

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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