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ミリオネア(2)

宝くじなどに当たって一躍億万長者になった人が5年以内に経済破綻をきたす確率は、少額の当選者の2倍にあたりると言う米国での統計があるそうだが、咲子の場合は投資で増やしたお金なので、くじ引きの当選者とは違う。咲子の今まで通りの慎重なお金の使い方の習慣は変わらないので、経済破綻をきたすとは思えない。ともかくペラペラ皆に吹聴しなければいいのだと、自分を戒めた。
 お金が入った人が最初に買うのは家だろう。しかし、咲子は幸運にも両親が生前遺産相続だと言って家を買ってくれたので、家を買う必要がない。でもせっかく貯まったお金だから何か大きな買い物をしたい。そこで思いついたのは、BMW。元ボーイフレンドに乗せてもらったBMWは安定感もあり、いつかお金を貯めたらBMWを買いたいと思っていた。BMWは旅行をするのと違って、古くなったら売れるので、BMWに掛けたお金が全部消えていくわけではない。こんなことを考えるのは咲子が苦労をして貯めたお金だからだろう。
「よし、BMWを買いに行こう」と、すぐにBMWの販売店に出かけた。ガラス張りの豪華な感じのショールームは、高級感を漂わせていて、最初ショールームに足を踏み入れるのがためらわれた。思い切って、ショールームのドアを開けると、血色の良いおなかが少し出た高級そうに見える背広でバシッと決めている中年のセールスマンがすぐに近づいてきた。そして、色んな車を説明しながら見せてくれた。その中で咲子の目に留まったのは、BMW i3と呼ばれるハッチバックの車だった。
「これいくらですか?」と聞くと7万8千ドルだという。100万ドルあるのだから、10万ドルくらいまでは使っていいだろうと判断して、そのハッチバックの青い車を買うことにした。
 咲子のジーパンにTシャツと言う、さえない服装を見たセールスマンは、「ローンでお支払いですか?」と当然のことのように聞くので、思わず「いいえ、一括払いします」と胸を張って答えた。セールスマンは、少し驚いたようだった。最初車自体の値段は10万ドルもしなかったのだが、色々余分なサービスをつけることを勧められ、結局10万ドル近く支払い、注文して1週間後には車を手に入れた。咲子は、緑と紺色が混じったような色の輝く車体を撫でながら、思わずニンマリした。


著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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