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行方不明(22)

2週間後、静子の前に現れたエリック刑事は、出発前の意気込みとは対照的に、意気消沈した様子だった。

「いやあ、残念なことになりましたよ。スティーブはシロですね」

「どうしてなんです」

「お宅のご主人が行方不明になった日は、スティーブはアメリカにいて、いつものように出勤していたんですよ。目撃者もたくさんいますし、このアリバイは崩しようもありません。出国の記録も調べましたが、トニーさんが行方不明になった2年前はオーストラリアには一度も帰っていないんですよ」

「共犯者がいるんじゃありませんか」

「いやあ、もしスティーブがミスター残酷だったら、共犯者は作らないと思いますね。リスクが大きすぎますから。それに強盗などだったらお金の山分けということで共犯者は作れますが、ミスター残酷の犯行は共犯者にとって何のメリットもありませんよ。これは捜査本部の一致した見解です」

「それでは、また捜査は振り出しにもどったということでしょうか」

「そうですね。残念ながら。スティーブがミスター残酷ではないという証拠もつかめませんでしたが、お宅のご主人の殺害には無関係だったということだけはいえます」とエリック刑事はため息をついて、戻っていった。

 その晩から、静子は「ミスター残酷」について、もう少し調べなければいけないと思い始めた。考えてみれば、その事件についてほとんど知らないと言っていい。インターネットで検索すると、いくつか出てきた。それによると、4人の女の子が暴行されている。そのうちの一人の犯行は確実にトニーの住んでいた家で行われている。その当時その家に住んでいたトニーもスティーブも犯行にかかわっていないとすると、その家の鍵を二人以外にもっていた人物がいたことが考えられる。しかし、家の鍵を持っていても、そのとき二人が家にいれば二人に知られずに女の子を連れ込むことは難しい。そこで、静子の思考は止まった。

 翌日州立図書館に行ってみた。犯行が行われた日付を中心に古い新聞記事を見ていった。そこで、静子にとって新しい発見があった。それは、心理分析官の見解だった。
「犯人は、中流階級の男で、結婚をしており、普通の家庭生活を営んでいると考えられる。犯行が行われた時期を調べると、学校の休みの時が多いことから、学校関係者とも考えられる。被害者達が、おなかが突き出ていると証言していることから、中年太りの太鼓腹の男と考えられる。」

 これに当てはまる人物が、トニーの周りでいただろうか?学校関係者といえば、グレッグだが、グレッグはどちらかといえばやせ気味で太鼓腹ではない。しかしダイエットによってやせることも可能だ。

 それからうちに帰って、トニーの遺品を調べていった。結婚指輪がまず目に入ってきた。それから色々な書類。そして写真のアルバム。子供のときの写真から始まって、学校でとった写真が載っていた。トニーが高校生の時の写真にグレッグが写っているものがないか、一枚一枚隅から隅まで調べた。背景に写っていることも考えられるからである。アルバムにある写真は皆学友ととったものか家族ととったもので、グレッグらしき人物は見当たらなかった。

コメント

以前のコメント

18   (2010-07-14)
続きが気になります〜。

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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