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私のソウルメイト(25)

次の金曜日に会う予約を受付で済ませて待合室を見ると、京子が待っていた。
「どうだった?」
私は興奮気味に言った。
「いろいろなことが分かったわ」
京子が「私のマンションに行って話を聞かせてよ」と言うので、そこからすぐに京子のマンションに直行した。
京子のマンションのソファーに腰を落ち着けると、私は今日分かったことを全部京子に話した。京子とは同じメイドとして働いていたこと、ロビンは私たちの雇い主の息子で、私はロビンと恋仲になって妊娠したこと。そこで、結婚相手として押し付けられた相手がアーロンだったこと。
京子は興味深げに耳を傾け、聞き終わった後、
「あんたと私がメイド仲間とはね。もう少しましな生活をしていたのかと期待していたのに」と笑った。
「今日はこれで時間切れになってしまったけれど、この続きも知りたいので、また来週の金曜日にマクナマラ先生に会う予約をとったわ」
「そうだよね。今の話を聞くと、宙ぶらりんにされた感じだよね。でも、これでどうして貴方がロビンに惹かれるのか原因が分かったわね。ただの袖振り合う人ではなかったってことね」
「そう。でも、あなたと私はこんな仲だったのよとロビンに言ったって、私が気が狂ったくらいにしか思わないでしょうね」
「それはそうね。この間ラジオを聴いていたら、催眠術に関して面白いこと言っていたわよ。ある研究者が何十人か学生を集めて自動車事故のDVDを見せて、後でその学生一人ひとりを呼び出して催眠にかけて車の番号を聞いたら、全員番号をすらすら言ったんですって。でも、実際に見せたDVDでは車の番号は見えないのよ。だから、車の番号はと誘導されると、車の番号が見えたように錯覚してしまうみたいね。だから、オーストラリアの裁判では催眠術で得た証言は無効と言うことになっているんだって」
「ふーん。でも、私の場合は、マクナマラ先生は私には誘導尋問なんかしなかったわよ。だから、私は今日得た情報は、私の想像ででっち上げたものとは思えないわ」
「でも、あなたの潜在意識の中で、ロビンと過去恋仲だったら良いなと言う願望がなかったとは言えないんじゃない」
「そう言われれば、そうだけど。でももし願望だけで今日見たことがでてきたと言うのは矛盾するところがあるわよ」
「どんなところが矛盾するの?」
「願望が現れるなら、私はどこかのお姫様であってほしかったわ。メイドなんかじゃなくて」
「それもそうだ。私だって、自分が過去世ではメイドだったなんて聞いて、あんまり気分よくないもんね」と二人で笑った。
私は、来週は、マクナマラ先生に会った後、京子とマンションで会う約束をして、うちに帰った。帰り道、私はロビンのうちに行って今日会ったことを話したい衝動を抑えるのに苦労をした。

著作権所有者:久保田満里子


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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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