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六度の隔たり(9)

~~ミアは銀行強盗事件で気が動転していて、ローラの依頼をすっかり忘れていた。ミアが、ローラの依頼を思い出したのは、その3日後だった。ジェーンから、ベン・マッケンジーはみつかったかと聞かれたので、思い出したのだ。
「マッケンジーBって言う人は、10人ほど電話帳に載っていたわ。3人は連絡取れて、お目当ての人でないのは確かめたんだけど、まだ7人電話していないのよ」
「そう。まあ、無理もないわよ。マークがあんな目にあったんですものね」
「明日は土曜日だから、勤め人も普通家にいるでしょうから、電話してみるわ」
そして土曜日が来て、ミアはまた電話にかじりついて、7人のマッケンジーBのうちの電話番号を順番に押していた。今度は4人のマッケンジーBと直接話すことができた。一人年齢的には該当する人物がいたのだが、この人はヨークには10年前に引っ越してきたということで、ジーナと言う人の恋人だったベンとは別人だった。2,3度電話しなかれば通じないところもあったが、その日のうちに10人全員に連絡がとれた。しかし、該当者はいなかった。これで、ベンがヨークに住んでいないと結論することはできなかったが、ヨークに住んでいる可能性が極めて低いように思われた。こうなればジェーンの言うように、高校の時の同級生にあたることを考えたほうがよかった。もう一度ローラから来た依頼の手紙を出してみると、もともと頼んできたという夏美のオーストラリアの電話番号が書いてあったので、夏美に電話してベンの高校を聞くことにした。インターネットの電話を使えば、電話代はほとんどかからない。
オーストラリアの時間をインターネットで確かめると、11時間の時差があることが分かったので、今午後9時なので、今かければ向こうは朝の8時のはずだ。夏美とは初めて話すし、夏美がどのくらい英語ができるのか分からないので、電話番号を押す間少々緊張した。
2,3度呼び鈴が鳴ったところで、「ハロー」と子供の声が聞こえた。
「夏美に話がしたいんだけど」と言うと、子供の「ママー!」と呼ぶ声が聞こえた。すると、すぐに
「夏美ですけど」と、外国人だと分かる訛りのある英語が聞こえた。
「私、ベン・マッケンジーさんを探して欲しいとローラから頼まれたミアというものですが」
夏美が慌てたような声で言うのが聞こえた。
「それじゃあ、イギリスからですか?だったら、こちらからかけなおしますが」
「いいえ、いいわよ。私の聞きたいのは、ベンさんが行った高校の名前なの。そしてベンさんが高校を卒業した年」
「高校と卒業した年ですか?それはジーナに聞かないと分かりませんが、ジーナに聞いて、折り返しお電話さしあげてもいいですか?」
「いいですよ。うちの電話番号は6723-9807です」
電話を切って15分後に、呼び鈴が鳴り、すぐに受話器を取った。思ったとおり、夏美からの電話だった。
「お待たせしました。ヨークの東高校を1961年卒業ということでした」
「ヨークの東高校ね」
「どうして高校を知りたいのですか?」
「電話帳で調べたんだけど、該当する人がいなかったの。だから、高校の元同級生なら何か消息を知っているかもしれないから、そちらから調べてみようと思うの」
「お手間を取らせてすみません」夏美の恐縮した声が聞こえた。
その晩、ミアはベンの高校と卒業年を書いたメモを台所のテーブルに置いて寝た。

著作権所有者:久保田満里子
 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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