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おもとさん世界を駆け巡る(12)

「3日以上は待てないぞ」と言うフレデリックの言葉を聞いて、おもとさんはすぐに行動に移った。外国人居住地に住んでいる知り合いの日本人妻にすぐに会いに行き、乳母になれるような女はいないかと聞いて回った。実家にも問い合わせた。すると、翌日実家の兄から聞いてきたと、一人のふくよかな女が現れた。母性愛に満ちたようなやさしそうなその女は、福と名乗った。おもとさんはその女を一目で気に入ったが、子供たちがお福に懐くかどうかが問題だった。福と初めて対面したリトル・タンナケルとポリーは人見知りをして、おもとさんの後ろに隠れて、出て来ようともしない。すると、お福は手提げ袋からお手玉を取り出すと、お手玉をして見せた。そして、
「お坊ちゃんもやってみませんか?」とリトル・タンナケルに聞くと、それまで一心にお手玉を見ていたリトル・タンナケルは、おずおずと母親の前から出て来て、こっくりとうなづいた。リトル・タンナケルにお福はお手玉のやり方を教えたが、リトリ・タンナケルが一つのお手玉を挙げてそれを受け取ることができるようになったときは、ポリーもおもとさんにしがみついていた手を放し、熱心にリトル・タンナケルのお手玉の動きを目で追った。これを機に、お福は二人の子供の心をつかんだようで、おもとさんがその場を離れても、おもとさんを追いかけてこなかった。これで、子供たちのことはそれほど心配しなくても良いと、おもとさんは安心した。
お福に「子供たちのこと、よろしくお願いします」と頼み、今晩フレデリックにフランスに同行すると告げようと思った。
ところが、お福が「それでは、明日から参ります」と退散した後、急に吐き気を催した。吐き気があるだけで、何ももどしはしなかった。そこで、おもとさんは自分が妊娠したことに気づいた。リトル・タンナケルの時もポリーの時も同じような吐き気で苦しめられた覚えがある。一旦、フレデリックと同行をすることを考えたおもとさんだが、つわりに悩ませられながらの船旅は無理だと、諦めることにした。
その晩、おもとさんから妊娠したことを聞かされ、フレデリックも、おもとさんを連れていくことを断念した。

ちょさく

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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