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藤沢美恵子(仮名)さんの物語(6)

さて、11か月のパリ滞在を終えてオーストラリアに戻って、セントキルダの銀行に行った時のこと。セントキルダのレストラン時代の知り合いにばったり会ったら、その人もフランスに行っていたと聞いて驚いた。同じ時期にパリにいたのに、パリでは会うことがなかったのが不思議。
 メルボルンに帰ってサービスアパートメントの経営に専念したわ。フランスに行く前に始めていたんだけど、それを5年くらい続けた。したことがないことにチャレンジするのが好きなのよ。セントキルダに16のフラットがあるビルを一つ買ったのよ。庭を手入れして、ベッドやシーツを買うなど、準備が大変だった。フラットの一つは日本人の学生夫婦に住んでもらって管理を頼んだ。1年目は客がいなくて困ったけれど、2年目からは客が増え、断るのが大変なくらい繁盛した。というのも、色々な日本企業に、日本からの出張者に割引をするので泊まってほしいと頼んで回ったので、日本人のビジネスマンの顧客が増えたため。
 5年経営した後、サービスアパートメント経営にも飽きてやめた。だって、一旦ビジネスが軌道に乗ると、余りやることってなかったもの。
 その後、結婚。結婚相手は、日本人。結婚後も名前を変えず、夫婦別姓。
 結婚後は陶芸に凝った。モナシュ大学のフランクストンキャンパスに日本人の陶芸家が研究員としてきて、この研究員が英語ができなかったので、英語の手伝いをしたりして助手となった。それがきっかけとなって、日本の彼の工房に1か月滞在して、陶芸を習った。メルボルンに帰って来た後、自宅の敷地が広かったので工房を作り、窯も作った。売れるものなら売りたかったが売れなかったので、次第に陶芸に興味を失っていった。

著作権所有者:久保田満里子

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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