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渡辺鉄太さんの物語(5)

質問:子供達に日本語の童話の読み聞かせ活動をされていますが、なにがきっかけで、始められましたか?
  娘が小学校に入る前、「メルボルンこども文庫」っていうのを始めました。僕の博士論文のテーマが、バイリンガルの子供の読み書きの習得でしたから、5,6人よそ様のお子さんを観察させてもらいましたが、あまり質の高い日本語を読ませていないなと感じました。どの程度子供が日本語の本を読んでいるのか調査したのですが、子供たちは補習校の日本語の勉強と、せいぜい漫画を読むくらいで、他の日本語の本を読んでいないなと感じました。英語の本はよく読んでいるんですが。私は、毎晩娘に日本語の本の読み聞かせをしていましたが、だんだん読む本が少なくなったので、皆で持ち寄ったら読める本の数も増えるのではないかと思って、始めました。
 最初は4、5家族、子供10人くらいで始めたのですが、宣伝もしなかったのに2年で30家族に増え、家に入りきらなくなりました。それで10年くらいたちました。うちの子は補習校に行っていなかったんですが、日系人の友達も増えました。僕も今でもつきあっている家族が何家族もいて、やってよかったなと思います。日本語の本を読めるようになる子はそんなにいないんですが、少なくとも親に読み聞かせてもらったから、日本語を耳から聞いて育った子供が、今何百人もいます。自分では読まなくても、日本の文化などを知る機会にはなったと思います。うちの子供も日本語の本を読みませんが、耳から聞いて、覚えて育ちました。
 去年からコロナ感染のため、文庫はお休みしています。今は自分の子供達が大きくなったので読み聞かせの必要を感じなくなりましたが、今うちには2500冊の本があるし、時々貸し出しに来る人もいるので、貸し出しだけは続けて行こうかなと思っています。いつも百冊くらいは貸し出しています。今の子供の親御さんとも親子ほど世代がはなれちゃったし、跡を継いでくれる人がいれば嬉しいのですが、なかなか後継者を探すのは難しいです。だから、自分が余裕がある限り貸し出しだけでも続けて行こうかなと思っています。一人でも借りに来てくれる人がいると、続けなきゃいけないかなと思っています。一人一人の子供を見ていると、読み聞かせする機会を奪っちゃうのはかわいそうだなと思うんですよ。
質問:子供さんはいくつになられましたか?
 長女は28歳で、今弁護士をしています。下の子、鈴吾郎は2002年にオーストラリアで生まれ、今19歳で、やっと高校が終わったところです。

ちょさ

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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