行方不明(24)
更新日: 2010-08-02
「助かった!」と思ったら、何か鍵をガチャガチャ動かしている音が聞こえ始めた。
「まさか、鍵を開けることはないだろう」と思うと、ドアが大きく開いた。そこにはニヤニヤした顔のグレッグがいた。
「静子さん、居留守をつかっちゃあいけませんよ」
静子は恐怖で顔が引きつった。
「お邪魔しますよ」グレッグは、そのままあがってきて、静子の前に立った。
「あ、あなたがトニーを殺したのね」
「そうだとしたら、どうします。」とにやけた顔を崩さないで、グレッグが言った。
「あなたにカンづかれたかと心配になって電話したら、あなたの声を聞いてすぐに分かりましたよ。あなたにカンづかれたことを」
静子は後ずさりした。それにつられてグレッグは一歩前にすすむ。グレッグの手には刃物が握られていた。
静子は、「どうしても聞きたいことがあるの」と震える声で言った。
「まあ、冥土の土産に何でも答えてあげますよ」と言った。
「あなたが、ミスター残酷でしょ?」
「そうだとしたら、どうだというんです」
「どうしてトニーの家を犯行に使えたの?」
「いやあ、たまたまあの犯行を計画している時に、トニーに会ってね。何かハウスメイトも両親のうちに帰っていないときに彼も出張で行かなければいけなくなって、うちにだれもいなくなるが、猫の面倒を見てくれる人がいなくて困っているということでね。僕が猫の面倒をかって出たんですよ。トニーは感謝していましたがね。」
「猫?」
「かわいそうにその猫、行方不明になって帰ってこなかったんですがね」「どうしてトニーを殺したの?」
「それは、トニーが僕に疑いを持ち始めたのを感じたからですよ。あなたと同じようにね」
静子は背中に壁を感じて、これ以上後ずさりできないところまで来たことを知った。
あっと言う間だった。グレッグに口をふさがれ叫び声も上げられない状態でもがくと、静子はおなかに鋭い痛みを感じた。見る見るうちに血が流れ落ちていくのが分かった。頭がボーっとなって、その場に崩れ落ち、記憶が薄れていった。
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