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行方不明(25)

「これで、私の人生も終りなのね」と思った。
そう思うまもなく光のトンネルをすごいスピードでみるみるうちにくぐっていっていた。そして走馬灯のように子供のときから今までの色々な楽しい思い出や悲しい思い出が頭をかけめぐった。
 トンネルを抜けると、そこにはトニーが笑顔で立っていた。その横にはジョンもいた。二人とも「よく来たね。」と迎えてくれた。静かな喜びが心の底から湧き上がって来た。至福の喜びとはこう言うのをいうのだろうと思った。すると、10年前死んだ祖母が、仏壇に飾ってある写真のままの様子で現れた。
「おばあちゃん!」
 懐かしさで駆け寄ろうとすると、祖母がおごそかな言った。

「静子、あなたは戻りなさい。あなたにはやらなければいけないことがまだ残っているのよ」

「おばあちゃん、私はここにいたいわ。こんなに平和で幸せな気持ちでいられるんですもの」

「いいえ、だめよ」と祖母が厳しい顔で言ったとき、耳元で誰かの呼ぶ声が聞こえた。
 「静子、静子」
 ゆっくり重い目を開けると、泣きながら「静子」と呼んでいる母が見えた。
「まあ、気がついたのね。お医者さんをよばなければ」と母親はどたばた部屋を出て行った。
 ゆっくり部屋を見回した。すると、ドラマの集中治療室の場面でよく見た心電図が見えた。どうやら、ここは病室らしいと思うと、母に連れられて白衣を着た医者が現れた。
「気がつきましたか?」

「私、どうしたんでしょう」

「刃物で切られて出血多量で瀕死状態で、この集中治療室で2日意識不明だったのですよ。でも気がついたので、もう大丈夫ですよ」と心電図を見ながら医者は言った。

 後で聞いたところによると、幸いにもエリック刑事は、静子のメッセージを聞いてうちにかけつけてくれたのだそうだ。そのとき静子は部屋の片隅の血の海の中に倒れていたが、グレッグが静子に止めをさそうと、刃物を振り上げたとき、エリック刑事がその腕をつかんで、グレッグを組みふし、その場で逮捕したということだった。

 逮捕されたグレッグはミスター残酷だったことを認めたそうである。そして、トニーが失踪した日には、たまたま帰宅中のトニーに会い、トニーからミスター残酷の捜査が再開され、その新聞記事に載っていたジェシカの証言にあった空港の近くの家が自分の住んでいた家だと気づいたと聞いた。そしてトニーが冗談めかしに、猫の面倒を見たとき何かおかしなことをしたんじゃないでしょうねとグレッグに言ったのをきっかけに、トニーが何か勘づいたのではないかと心配になり、殺害することを決意するにいたったという。そのため、うちに誘ってウイスキーを飲ませ、酔ったところを後ろからハンマーで殴ったということだった。
 静子はジョンも彼に殺されたのではないかと思っていたが、グレッグはジョンには手を出していないということだった。あれは本当に事故だったのだと。

 

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以前のコメント

mp   (2010-08-08)
事件解決。ほっとしました

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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