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行方不明(最終回)

エピローグ

 静子は1ヶ月後退院することができた。その後すぐにトレーシーに会って、グレッグに刺されて気を失った時奇妙な体験をしたことを話した。するとトレーシーは即座に「それは、臨死体験よ」と言った。

「臨死体験?」

「ええ。死んだと思った人が生き返った時、その人たちが死んでいた時体験したことを臨死体験って言うんだけれど、皆あなたと同じようなことを言うのよ。臨死体験をした人たちは、死ぬことが怖くなくなったって言うわ。あなたも、私と同じようにきっと不思議な能力があるんだと思うわ。私と一緒に警察の手伝いをしない?」

 静子はトレーシーの申し出に心を動かされたが、結局はそれを断って、今もツアーガイドをしている。トニーのためなら怖い夢も耐えられたが、根が臆病者の静子には怖い夢には耐えられないと思えたからである。ただ一つ気になっていることがある。祖母の「あなたにはやらなければいけないことが残っている」と言う言葉である。一体自分がやらなければいけないことって何なのだろうかと考える。でも、結局は人生の目的を模索しながらこのまま一生を終えることになるのかもしれない。ただ一つ静子が確信したことがある。静子の一生が終わったときに、静子の愛する人たちが迎えに来てくれるということである。
「私は一人ではないのだ」と。

著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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