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私のソウルメイト(10)

まず、サウス・ヤラに住んでいるb.gourleyに電話した。
呼び鈴の音が止まると同時に、女の人の声が聞こえた。
「ハロー」
「グーリーさんのお宅ですか?」
「そうですけど」
「ロビンさん、いらっしゃいます?」
「あなただーれ?」
ここで、京子はぐっとつまってしまった。
「私、マーケットリサーチをしております、ルーシーと申しますが、ロビンさんお友達から、マーケットリサーチにご協力してもらえるかもしれないといわれたので、お電話しているのですが」
「マーケット・リサーチ?ちょっと、待って」と言うと、遠くに向かって「ロビン」と呼んでいる声が聞こえた。
しばらくして、「ハロー」と聞こえた男の声は、低い声で、私のロビンとは全く違った声だった。私が首を横に振ると、京子は受話器を置いた。
次は、ブライトンに住んでいるr.gourleyに電話した。
最初に電話口に出てきたのは、r.gourleyだったが、たばこを吸いすぎたようなしわがれた声だった。これも、違う。
3番目はキューに住んでいるr.gourleyに電話。電話の呼び鈴が10回も鳴り続けただろうか。その後には、男の人の声で、「今電話に出られません。メッセージをお残しください」と聞こえたが、この留守電の声も違っていた。
4番目はツーラックに住んでいるr.gourleyに電話。
呼び鈴が2回も鳴り止まないうちに「ロビンです」と聞こえた声は、私が聞きたかった、あのロビンの声だった。私のぱっと明るくなった顔を見て、京子は何も言わず電話を切った。
「この人が、あなたの好きなロビンさんね。これで、住所は分かったわ。本人が出てきたから、家族構成は分からないわね。日本だったら、近所の人に結婚の話があって調べている興信所の者だといえば、ある程度の情報は入るでしょうけど、ここでは、隣にどんな人が住んでいるか知らない人も多いから、近所で聞きまわるというのは無理だと思うわ。だから、今度、この家を監視して調べる以外ないわね」と京子が言った。
 その翌日、私は早速ツーラックの住所の家を見に行った。昼間だったから、勿論ロビンはうちにいるはずはなかったが、彼の家族を遠くから見ることができるかもしれないと思ったからだ。ロビンのうちはクリーム色の高い塀で囲まれていて、外から家はほとんど見られず、塀の上から覗いている二階の部分が少し見えるだけだった。メルボルンの家は、塀が全くないか、あってもお飾りのように50センチばかりのレンガを積み重ねた物が多いのに、高級住宅地のツーラックともなると、様子が違っていた。広い道路には木が生い茂り、並んでいる家も大邸宅ばかりで、塀は高く家の中は見られない。昼間といえども人通りもなく、閑散としていた。私は、ロビンの家の前の道路の向かい側に車を止め、誰か家から出てこないかと、ロビンの家の門を眺めていた。ロビンの家に着いたのは10時ごろだったが、10時半頃、ロビンの家の前にホンダシビックのシルバー色の車が止まった。車の中からは50代とも思われる女が出てきたが、ツーラックの住人にしては、着ている物が少しお粗末だった。青いセーターに黒いスラックスをはいているその女は、すぐにロビンの家の中に消えていった。その女はロビンの家族の一員なのかと考えてみたが、どうも納得いかなかった。そして2時間後、その女は、家から出てきて、ホンダシビックに乗り、走り去った。着ていた物から推測すると、その女はロビンの雇った家政婦のように思われた。ツーラックの大邸宅に住む人ともなれば、奥さんが毎日家の掃除をすることは考えられない。私のそんなに金持ちでない中流階級の友人だって、家政婦を雇って、週に1回掃除に来てもらっている。このまま一日家を監視しているのも無駄に思われ、また出直すことにした。今度は2時過ぎから4時半ごろ観察してみよう。学校が終わる頃だから、ロビンに子供がいれば、その頃家に帰るところを見られるだろう。そう思って、その日はたいした収穫もなく退散した。監視の結果は、当然のことながら、京子に報告した。


著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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