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私のソウルメイト(50)

「そうですか。でも、前におっしゃいましたよね。過去世で縁があったからって、それがどうしたっていうんだって」
「そうですね。あの時は、あなたも既婚者だったし、面倒なことに巻き込まれたくなかったので、ああ言ったのですが、あの退行催眠の後、僕はあなたが言うようにあなたは僕のソウルメイトなんだと確信したんです。確信したけれど、連絡をとらなかったのは、あなたを離婚させたりするようなことはしたくなかったからなんです。どちらが悪いにしろ、離婚と言うのは、どちらも傷つきますからね。でも、あなたが一人になったと聞いて、どうしても今の僕の気持ちを伝えなければいけないと思ったんです」
 私は胸がつまってしまった。ロビンがそんなふうに自分を愛していてくれているとは、思いもしなかった。自分の思いを打ち明けた時ロビンから拒絶され、それで、私たちの縁は切れたのだと思っていた。
「ありがとう。私はあなたに会ってから、一日たりともあなたのことを思わない日はなかったわ。だから、あなたのことをソウルメイトだと思ったの。あなたも私のことをソウルメイトとして認めてくれて、本当に嬉しいわ」とだけ言って、慌ててハンドバックからハンカチを取り出し、目頭を押さえた。
 私達は、その晩は手に手を取り合って、レストランを出た。彼の手は暖かく、彼の体のエネルギーが手を伝わってくるのを感じた。私の細胞のひとつひとつが喜びの声をあげていた。夜空を見ると星が一杯見え、いつもより美しく見えた。私は私にも新しい人生が送れる日が来たことを知った。私の車まで見送ってくれたロビンに、私は次の週の土曜日にうちに食事に誘った。どうしてもダイアナとエミリーを彼に会わせたかったからだ。過去世では血のつながった親子でありながら、一度も親子としての名乗りを上げることができなかった三人をどうしても引き合わせたかったのだ。ロビンは嬉しそうに「勿論、行くよ。では、また来週」と言って、私の車が見えなくなるまで、手を振りながら見送ってくれた。
私が家に帰ると、ダイアナが寝ないで待っていた。
「どうだった?」と顔を覗き込んで聞くダイアナに、私の頬がゆるんだ。
「来週の土曜日、お食事に招待したわ。あなたとエミリーを引き合わせたいと思っているんだけど、大丈夫でしょ?」
と言うと、怪訝そうな顔をして
「どうして私とエミリーを彼に紹介したいの?」と聞いた。
無理もない。私はダイアナに私達の過去世の話をしたことがなかっのだ。
「実はね、ママ、退行催眠を受けたことがあるの」
「退行催眠?それ、なに?」
「催眠で昔の出来事を思い出すことよ」
「へえ。でも、どうして退行催眠を受けたの?」
「自分の過去世が知りたかったのよ」
「過去世?」
「仏教ではね、人間は何度も生まれてくるって信じられているんだけど、前の人生のことを知りたかったのよ。」
「ふうん。面白そうね。それで、どんなことが、分かったの?」
「前の人生で、あなたとエミリーは双子の姉妹だったのよ。そして、ロビンが貴方たちのお父さんだったの」
「へえ!」ダイアナは驚きの声をあげた。
「それじゃあ、ママは前の人生では、ロビンと結婚していたの?」
「まあ、それが複雑な事情で、アーロンと結婚したんだけどね」
「じゃあ、不倫したってわけ?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。その人生ではね、ママとロビンは身分が違いすぎて一緒になれなかったのよ」
「そうなの」とダイアナはニヤニヤした。
「それを聞いたら、私もロビンに会いたくなったわ。エミリーにも話しておくわ」

著作権所有者:久保田満里子


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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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