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おもとさん、世界を駆け巡る(8)

「予定通り船は5日で函館について、10日間函館に停まっていたんだ。その間、僕は良い馬がいないか見て回ってね。やっと良い馬を手に入れたとホクホク顔で馬を連れて船に乗ろうと思うと、函館奉行所の役人に止められてたんだ。『馬を連れ帰ること、あいまからぬ』と、どうしても乗船の許可をしてくれないんだ。騒動を聞き付けたモンジュの艦長が水兵を引き連れて、戦闘も辞さないという事態に及んだものだから、相手も折れたんだ。おまけに艦長は、奉行の謝罪もとりつけてくれたんだ。馬一頭でこんな騒ぎになるとは夢にも思わなかったよ」

そう語るフレデリックは、他人事のように話すので、おもとさんは、呆れてしまった。

「でも、馬は無事に連れて帰られたのですね」

「そうだ。これで、この秋の競馬では、優勝できるぞ」と、フレデリックは満足そうに言った。

 その秋の競馬に、おもとさんはリトル・タンナケルとポーリーを連れて、フレデリックと一緒に行った。前回余りに近くで見たため、砂埃にまみれたことを思い出し、子供もいるので、少し柵より離れたところに座った。競馬場では、外人居留地の主だった面々が集まっていた。フレデリックは今年は優勝すると自信満々だったし、おもとさんも子供たちと一緒に声を張り上げて応援したが、最後のことろで他の馬に追い抜かれ、優勝はできなかった。それにも懲りず、フレデリックの馬に対する情熱は増すばかりであった。

著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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