アインシュタインの覚書(最終回)
更新日: 2023-02-05
2017年のことだった。修平の甥の佐藤昇は、修平の妻が亡くなった後、修平の遺産を相続した。相続した家は廃墟寸前だったので、取り壊して駐車場にでもしようと計画を立て、修平の家の中の物を整理した。その時、押し入れの隅に帝国ホテルのメモ用紙に何やらアルファベットで書かれたものを見つけた。昇はアメリカにも留学したことがあり英語は少々自信があり、そのメモの走り書きを読んでみた。しかし書かれているアルファベットは英語ではなかったので書いてある内容は分からなかったが、最後のサインを見て仰天した。どう見ても、アインシュタインと読める。アインシュタインって、あの有名な物理学者の事なんだろうかと半信半疑であった。そこでアインシュタインに詳しい学者に、その手紙を見てもらったところ、確かにあの有名なアインシュタインのサインだと言われ、頭がぼうとしてしまった。このメモが一体いくらの値打ちがあるのか知りたくて、昇は競売にかけて売る決心をした。競売に出すには、アインシュタインがユダヤ人だったので、イスラエルで売るのが一番良い値が付くだろうと言うアドバイスを友人からもらい、競売人にイスラエルのエルサレムで競売にかけるように依頼した。そのメモ用紙が落札された後、昇のもとに、結果を知らせるメールが届いた。それには「230万ドル(およそ2億5百万円)で落札されました」と書かれていた。チップとしてもらった覚書がこれほどの高値になるとは、アインシュタインはもとより、佐藤修平も夢にも思わなかったことだろう。この報告を受けて昇は自分の頬をつねって、夢でないことを確かめた。
注:事実に基づいたフィクションです。佐藤修平も佐藤昇も架空の人物です。
著作権所有者:久保田満里子
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