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おばあちゃんの映画の思い出(2)

次の思い出も、また戦争のことで、暗い話になるんだけれど、1945年8月6日のことだったわ。その日は夏休みだったので、友達のみっちゃんと二人で広島に映画を見に行く約束をしたの。呉駅でみっちゃんと落ち合う予定だったんだけれど、私が遅刻をして、予定していた汽車に乗れなかった。次の汽車に乗れたんだけれど、その汽車は理由も告げられないまま途中で停まってしまって動かなくなり、乗客は皆おろされたの。だから、歩いて呉に歩いて帰るはめに陥ったわ。その途中で軍用のトラックが通りかかり、呉の繁華街くらいまでなら乗せるくれると言うので、みっちゃんと二人荷台に乗せてもらったの。そしたら、吉浦って呉より一つ広島寄りの村まで来た時、ピカッと光ったかと思うと、広島のある方向の上空にきのこ雲が大きく立ち上ってできたの。ムクムクと。勿論その時、それが原子爆弾と言う恐ろしい兵器だとは知らなかった私は、雲の水蒸気に反射してできるキラキラ光る七色の光の美しさに見とれたわ。あとで、広島の惨状を知り、ぞっとしたけれど、きのこ雲が美しく見えたのは否定できないわ。この原爆が落とされて9日たって、戦争が終わったの。

ちょさく

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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