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恋物語(最終回)

「実は僕もお宅のご主人と同じ肺がんにかかって、医者から長く持って1か月だと宣告されたんだよ。だから君の力になってあげたくても、何もできないんだ。君が幸せでいることを祈っているよ」
 ああ、デニスももうすぐあの世に行ってしまうのかと思うと、寂寥感が胸いっぱいに広がった。
 それから一か月後、デニスの奥さんから電話があった。
「主人は昨夜亡くなりました。亡くなったらあなたに知らせてくれと言われていましたから、お知らせします」
 事務的に言うデニスの奥さんの声を聞きながら、和子は自分が愛した二人の男が次々とあの世にいってしまったことを痛感し、全身の力が抜け落ちていった。
 ケリーとデニスが死んだ年からすでに50年近くもたってしまった。
「私は二人の男の人から愛された幸せ者。そして私があの世に行くのももうすぐだろう。そしてあの世で、またケリーとデニスに会える」。そう思うと、和子は幸せな気持ちになった。
 デニスの夢を見て一週間後、寝ている間に心臓発作に襲われた和子は、突然あの世に旅立った。その死に顔は見る人によっては微笑んでいるようにも見えた。

著作権所有者:久保田満里子




 

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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