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アンブレラツリーは見ていた(2)

~~「最初に挙がった容疑者は5名だったのだが、ガブリエルとマイクの妹のパトリシアにはアリバイがあったんだ。ガブリエルは犯行時間に、友人とレストランで夕食をいたそうで、レストランのウエートレスからも証言が取れている。パトリシアはちょうどシドニーに出張で、メルボルンにはいなかったことが分かっている」と、ロバートが言った。
「と言うことは、容疑者は3人に絞られたわけね」
「そうなんだが、これから捜査は難航するだろうな。何しろ目撃者がいないのだから」
私はテーブルの上に置かれた現場の写真を手にとって見た。
マイクはやり手だということだが、中々ハンサムな男だったようだ。青い目で睫が長く大きな目を見開いたまま机の前で倒れていた。頭を殴られたのか、茶色の髪の毛のこめかみの部分から血が流れ出ていて、クリーム色のカーペットがマイクの頭を取り囲むように赤く染まっていた。マイクの死体があらゆる角度から取れらた写真を一枚一枚見ているうちに、私の目が一枚の写真に吸い寄せられた。
「このマイクの頭のところに植木鉢が倒れているようだけど、これは犯行時に倒れたのかしら?」
「そうらしい。秘書のダイアナは5時にマイクに会いに行った時は、植木鉢は倒れていなかったと言っている。マイクが倒れるときに、思わず植木鉢のアンブレラの木の葉っぱをひっ掴まえたために、植木鉢も倒れたというのが鑑識の見解だ」
それを聞いて、私はあることを思いついた。
「ねえ、この植え木が、犯行を目撃しているってことね」
そう言うとロバートは驚いたように
「勿論、そうだが、それがどうかしたのか?」
「ね、この植木の証言を聞いたらどう?」
「植木の証言?どうやって」と言うと、ロバートは笑い出した。
「まさか、植え木がしゃべるなんていうんじゃないだろうね」
「勿論、植木はしゃべれないけれど、先日私面白い本を読んだのよ。ちょっと待って。持ってくるから」
私は本棚から、最近古本屋で買った本を引き抜き、ロバートに渡しながら言った。
「この本に書いてあったんだけど、バクスター博士と言う嘘発見器の研究者によると、嘘発見器は、植物にも有効だということよ」
「嘘発見器?」
「ええ、バクスター博士は嘘発見器の研究をしている時、面白半分に植木鉢の葉っぱに嘘発見器を取り付けたら、反応したというの」
「眉唾物だなあ」とロバートは疑わしげに言った。
「まあ、眉唾物かもしれないけれど、実験してみる価値はあるんじゃない?」
「どうやって?」
「植物って自分に危害を与えた人物に対して、反応するんですって。また危害を加えられるんじゃないかって。だから、このアンブレラの木の葉っぱに嘘発見器を取り付けて、容疑者一人ひとりをアンブレラの木のある部屋に入ってもらって、アンブレラの木がどう反応するか調べるの。ポリグラフの線のゆれがひどくなったら、その人が犯人って訳」
「そんなことしても、たとえ犯人が分かったとしても、そんな証拠では起訴はできないよ」
「勿論、それは分かっているわ。でも、犯人が分かれば、捜査するにも、その人一人に絞ればいいんだから、楽なんじゃない?勿論容疑者に嘘発見器をとりつけるほうが正統だけれど、それだと一人ひとりに取り付けなければいけないし、質問も考えなければいけないから大変でしょ?それに、私、本当に植物が嘘発見器に反応するかどうか、興味があるのよ」
私の説得に頭を振りながらも
「まあ、捜査が行き詰まりそうだから、やってみるか」とロバートは重い腰をあげることにした。
 

著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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