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娘の恋人(1)

久しぶりに電話をかけてきた一人娘のフィオーナが、「今度恋人を連れていくからね」と、言ってきたときには、びっくり仰天。大学を卒業して、シドニーに就職。フィオーナは家にはたまにしか帰ってこない。たまに帰ってきたときに話すのは、仕事のことばかり。キャリアウーマンの娘に恋人がいるなんて、全く気がつかなかったのは、母親としてうかつだった。

「ジョージ、フィオーナが恋人を連れてくるって言っているわ。どうしよう。へんな子を連れてきたら困るわ」とおたおたする私に比べて夫のジョージは、おっとりと構えている。

「まあ、顔に目が二つ、鼻が一つに、口一つついていれば、言うことないじゃないか」

「何人かしら?日本人、それともオーストラリア人?それとも日本人以外のアジア人、それともオーストラリア人以外の白人?それとも黒人?アボリジニ?」と、私の頭は疑問符でいっぱいになる。

「仕事は、何かしら?サラリーマンならいいけれど、生活力のないアーティストだと困るわ」と、つまらないことを考えてしまう。

私が色々気をもんでいるのを見て、ジョージは

「そんなに心配なら、電話してきいてみればいいじゃないか」と言う。確かにそうなのだが、仕事で忙しくしている娘は、私が時折電話しても、「何の用事?」と、つっけんどんで取り付く島がない。だから電話するのは気後れする。フィオーナが帰ってくると言ったのは、3日後の日曜日。3日たてば、全て分かる。それまでの我慢だと、自分に言い聞かせる。友人の久恵なんか、娘が一日に一回、多い時は2回電話してくると嬉しそうに言っていたが、我娘ときたら、コミュニケーション能力ゼロだ。

ジョージに、

「ねえ、ベッドルームは別々に用意したほうがいいかしら?」と聞くと、

「いまどき、30にもなろうという娘を恋人と別々に寝させる野暮な親がいるか」と、呆れ顔。

父親は娘の恋人に嫉妬すると聞いたことがあるが、ジョージには、そんな気配は全く感じられない。

その3日後、私は客室のベッドルームに新しく購入したシーツや布団かけ、枕カバーなどが、きちんとおさまっているかどうか確かめ、まるで自分の結婚相手にでも会うようなそわそわした気持ちで娘の帰宅をまった。

玄関のベルがピンポーンと鳴ると、小走りで玄関に出て、途中でひっくり転げそうになってしまった。

ドアを開けると、ドアの向こうには日に焼けた娘が立っていた。「お帰り!」と笑顔で迎えた私は、娘の後ろにいた娘の恋人を見て、ひっくり転げるほど、びっくりした。娘が、

「こちら、私の恋人のロビン」と、言って、紹介してくれたのは、背が高く、短い茶色の髪をした白人の女性だったのだ。

著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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