熱血母ちゃん(2)
更新日: 2022-08-28
勉強し始めてしばらくすると、お父ちゃんが良太の部屋に入って来た。「良太、九九が覚えられなくて、晩飯抜きだってな」
お父ちゃんは良太に同情したが、何しろお父ちゃんもお母ちゃんには頭が上がらない。
「お父ちゃん、どこにいるの?」とお母ちゃんの声が階下から聞こえると、「今、行く」と言って、お父ちゃんは一言良太に「頑張れよ」と言って肩をたたき、部屋を出て行った。
良太が、九九を全部覚えられた時は、9時半を過ぎていたが、お母ちゃんの前で、全部九九が言えたので、その晩はかろうじて、晩飯抜きを免れた。
翌朝、お母ちゃんは「今日は保護者の役員会があるから、学校に行かなきゃいけないから、一緒に出掛けよう」と、言った。それを聞くと、良太は、同級生に見られたら、からかわれるのを知っていたので、渋い顔をした。「なによ、その顔は」とお母ちゃんが言うので、
「だって、お母ちゃん、知らない子でも怒り飛ばすでしょ。だから皆から良太のお母ちゃんは熱血母ちゃんだって、からかわれるんだよ」
「熱血母ちゃんで、何が悪い?お母ちゃんは、いっぺんだって、間違ったことを言ったことはないよ」
良太は、お母ちゃんの言うことはもっともだと思うけれど、相手と場所をわきまえていってもらいたいものだと、心の中で思った。それにお母ちゃんを煙たがっているのは、良太だけではないことを知っていた。いつか、じいじとばあば、つまりお母ちゃんの両親に、
「来週の日曜日運動会があるから、応援に来てよ」と言ったら、「良太、来週の日曜日は用事があって、行かれないよ。すまないね」と、即座にばあばに断られた。その晩、ばあばのうちに泊まったのだが、良太が寝たと思ったのか、ばあばがじいじに話している声が聞こえた。
「良太の運動会には行ってやりたいけれど、正子の母親だと知られると恥ずかしくて仕方ないから、行かないと言っちゃったけれど、かわいそうなことをしたね」
だから、良太は、ばあばもお母ちゃんの事を恥ずかしがっていることを知っている。
ちょさ
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