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恐怖の一週間(最終回)

  恐怖から解放されて3ヵ月後、急に胸焼けがして食欲を失った私は、久しぶりに医者に会いに行った。診察を済ませた医者は、にっこりして言った。
「おめでたですね。妊娠していますよ」
私は医者の言葉を聞いても信じられなかった。もう42歳にもなった私に、子供ができるなんて、奇跡としか思えない。
そして、あの3ヶ月前に見た奇妙な夢を思い出した。
「ママ、僕を殺さないで!」
あの夢で見た胎児は、あの頃妊娠してできた子だったのだろうか?
私は嬉しい気持ちと奇妙な気持ちと交じり合った不思議な気持ちに襲われた。
私の妊娠を知ったダンは、勿論大喜びしてくれた。
「やっと、僕たちパパとママになれるんだね」
麗子はと言うと、
「水木先生に良子が妊娠したことを伝えると、先生はニッコリしておっしゃったわ。今おなかの中にいる子は、あなたが19年前中絶した子供の生まれ変わりだって。今度は大切に育てなさいと伝えてくれということだったわ」
あの奇妙な事件が起こらなかったら、きっと私は麗子の言葉に吹き出していただろう。でも、あの奇妙な事件があってから、私は変わってしまった。
「そうね。私もそう思うわ。だから、この子を大切に育てるつもりだから、水木先生にご心配なくと伝えておいて」
心の底から、そう思った。

ちょさ

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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