家族(最終回)
更新日: 2025-02-02
オーストラリアに帰ってきたマーガレットは、イギリスでできた新しい家族を、ケイトとガブリエルにどう話したらいいものかと思い悩んだ。やっと話をする勇気が出たのは、オーストラリアに帰って3日目のことだった。マーガレットはケイトとガブリエルと三人で夕食を囲んだ時、おそるおそるまず初恋の人だったサイモンと再会したことから話し始めた。
「再婚するの?初恋の人と再婚するなんてロマンチックじゃない。お父さんが出て行って、ママったらかなり落ち込んでいたから心配したんだよ」と二人の娘たちに言われ、慌てて、「まだ、再婚するって決めたわけじゃないのよ。向こうだって仕事のこともあるし」と言ったが、娘たちは取り合ってはくれなかった。ティーンエージャーの娘たちもボーイフレンドがいるので、母親が再婚しても当然だと思ってくれたようだ。ケイトは「私たちに遠慮することなんてないんだよ。実は二人でお母さんもイギリスでいい人が見つかればいいねって話してたんだよ」とまで、言ってくれた。ひとまずサイモンのことは話したが次にディーンのことを話さなければいけない。これはサイモンの話をする以上に勇気がいった。
「実はね、サイモンとの間には子供ができたんだけれど、その時私達高校生だったし、両親に養子に出すように言われて、養子に出してしまったの。その子にも会ったの。名前はディーンと言って、素敵な青年になっていたわ」
「えっ?私たちにお兄さんがいるの?」
二人とも目をまん丸くして驚くと、次に出てきたケイトの言葉は、
「やったあ!私ね、いつもお兄さんが欲しかったのよ。お兄さんのいる友達を見てうらやましかったんだ」だった。
「ディーンはそのままイギリスで暮らすんだけど、今度休暇で遊びに来たいって言っていたわ」とマーガレットが言うと、
「うわー。お兄さんに会えるなんて、楽しみだわあ」と二人の顔は久しぶりに輝きを取り戻した。
娘たちの喜ぶ姿を見て、マーガレットは心の底にたまっていたわだかまりがなくなり、喜びが湧き上がってきた。そうだ。私だって幸せになることができるんだ。離婚に打ちのめされて人生が終わったような暗い気持ちで過ごしていたが、私にだって第二の人生が待っているのだ。「それじゃあ、ディーンにいつ来てもいいって、メールしておくわね」とマーガレットの顔に笑みが広がっていった。
ちょ
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