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スーパーウーマン(2)

 私はアキと知り合って1か月たった頃、私にも少林寺拳法を教えてくれないかと頼んだ。アキには「私はまだ2段なので、3段にならないと正式に教える資格がないの」と、やんわり断られた。「でも、友達として非公式に教えてくれない?私もアキさんのように、自分の身は自分で守れるようになりたい」と言うと、アキは笑いながら、
「久美子さんには、久美子さんを守ってくれるご主人がいるじゃない」と言う。
「でも、いつもハリソンと一緒に行動しているわけじゃないし…」と、哀願する目で彼女を見ると、
「じゃあ、基本だけ教えてあげるわね」と言ってくれた。
それから、二人が仕事を休める水曜日に、私は久美子のアパートに行って、少林寺拳法を習い始めた。
「まず、立つときは、カタカナのレの字型に足を置くの。そして腰を低くすると、ちょっと押されただけでは倒れない体形になるのよ」と、立ち方から習った。
「拳を振る時は、相手の急所めがけてまっすぐに、腰をねじるようにしながら、上半身を動かして突くの」と、教えてくれた。
「蹴りは大切よ。突きよりも蹴りの方が何倍も相手にダメージを与える力が強いのよ。まあ、痴漢の撃退法としては、相手の股間を蹴り上げて、一目散に逃げる。これに、限るわよ」とも言い、突きと蹴りの練習を徹底的にやらされた。
3か月もたつと、私も一応、突きと蹴りが様になってきたように思った。次は防御の仕方を習った。突きと蹴りを腕で防ぐわけだが、この練習の後には腕があざだらけになった。
そして、1年後、アキのビザが切れて、アキが帰国する頃には
「久美子さん。筋がいいみたいね。随分上達したわね」と、アキに言われるほどになり、少し自分に自信がついてきた。アキが帰った後も、習った技の練習は怠らず、一人で続けていった。
 アキが帰国して1年後には、私達夫婦に娘、カイリーが生まれた。すると、これまで借りていた町に近いアパートは手狭となり、日本にいる両親の援助で、西の郊外の新興住宅地にマイホームを買った。新しい家は、これまで住んでいたアパートより広く、近くに子供の遊べる公園もあり、私は、子供をのびのびと育てられると、嬉しさでいっぱいだった。
そこに住み始めて1か月たった時だった。夜中に、玄関のあたりがざわついているので、目が覚めた。

ちょさ

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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