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行方不明(14)

その日は日本の鉄道組合のグループのバララットへのツアーが入っていた。行きはバスで行ったのだが、帰りは電車に乗りたいというツアー客の希望で、電車に乗った。組合員の中には電車の運転手も3人いたので、運転室を見たいというので交渉し、その3人と静子は運転室に入れてもらった。そのとき運転室に時刻表がみあたらないのを不審に思った日本人の運転士の一人が、「時刻表が見当たらないようだけど、どこにあるんでしょうね」と言うので、オーストラリア人の運転士に聞くと、「どこかにあるはずだけどなあ。」と散らかっている紙をひっくり返し始めた。しばらくして、「ああ、あった、あった」と見つけたのだが、日本人の鉄道員はびっくりした様子だった。見つけた時刻表を日本の鉄道員に見せながら、得意そうに「ああ、今5分遅れているな。まあ、5分なら悪くないな。」と運転士が言った時には、日本の鉄道員たちは、みな開いた口がふさがらないようだった。「僕たちは1分でも遅れると、始末書を書かされますよ」と、日本の鉄道員は、静子に言った。

 家に帰ると、木村から電話があり、来週レイク・エントランスにいけないかと言ってきた。レイク・エントランスなんて行った事がないし、どこにあるのかも知らなかった。

「退職した日本人の夫婦が時間をかけてオーストラリアを回りたいと言うことで、レイク・エントランスに行ってみたいということなんだ。」

「でも、私、レイク・エントランスなんて行った事ないですよ。」

「いや、それは分かっているんだけど、英語のできない人たちで、英語の通訳をしてほしいと言うんだよ。日帰りでは行けないところだから、1泊2日になるんだけど、泊りがけで出かけられるような人って、君しかいないんだよ。まだ一週間あるから、レイク・エントランスについて調べられる時間があるだろう。頼むよ」

説得されて、しぶしぶ承諾した。

 翌日は仕事が入っていなかったので、インターネットでレイク・エントランスのことを調べてみた。車で片道4時間半かかるということだから、確かに少なくとも一泊しなければいけないようだった。木村が車の手配してくれるということだから、交通のほうは心配しなくてもよいのが助かった。インターネットには空から眺めた景色が載っていたが、半島や島が複雑に入り組んでいた。150キロばかり続く浜に砂丘があるというから、日本の鳥取とはスケールが違うのだろうと思われた。インターネットからの情報は限られているので、地元に観光情報センターがあるということだから、そこで情報を得る以外ないように思われた。

 一週間は、あっと言う間に過ぎ去り、レイク・エントランスに行く日になった。

著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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