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百済の王子(22)

 セーラが 豊璋から軽王子が天皇に即位されたと聞かされたのは、大海人皇子の訪問の翌日、7月14日であった。そして中大兄皇子が、皇太子として立てられたということも知った。
セーラは、舒明天皇の長男の古人大兄皇子が、皇位継承からはずされたと聞いて、これでは紛争が起こるのではないかと憶測したが、その憶測は見事にあたった。古人大兄皇子は、皇極天皇の命に従い、自分は政治にはかかわらないと宣言して吉野に去ってしまっていたのだが、数人の豪族と結託して、武器を密かに集めていたのが発覚して、中大兄皇子の送った討伐隊に殺されてしまった。討伐隊と言っても、わずか40人の部隊だったそうで、古人大兄王子と、王子の息子は殺され、王子の妃や妾は自害してしまったということだった。 豊璋からこのことを聞かされ、「やっぱり」と、セーラは思った。。権力を持つということは命をかけるだけの価値のあることだと思われていた時代だということが、セーラはやっと、理解できるようになっていた。何しろ権力を持つ者は、持たないものを殺生する権利を持っているのだから、生き残るために、権力をもつことが最優先されるわけなのは無理もないことだと納得した。

著作権所有者 久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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