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船旅(6)

アマンダの目が、テーブルの上に置いてある、光江が読んでいた本に目が行った。
「あなた、テス・ジェリツェンが好きなの。私も彼女の犯罪小説、大好きよ」
テス・ジェリテェンは医者から犯罪小説の作家になった人だが、アメリカ人なので、オーストラリア人でファンの人だと言う人とは今まで会ったことがなかった。だから初めてテス・ジェリテェンのファンに会って、光江は嬉しくなった。
「もう持ってきた本は全部読んじゃったので、実は退屈しているの」と言うと、
「彼女の最新作の『夜の形』は、もう読んだ?」
「まだ、読んでないわ」
「それじゃあ、貸してあげましょうか?」と言う。
「まあ、嬉しいわ」
「じゃあ、後で持ってきてあげるわ」と言って、帰っていった。
光江は彼女とニールの関係を知りたいと思い、彼女を誘ったのに、いつの間にか彼女と旧知の仲のような錯覚に陥った。
光江がニールに、「アマンダって気さくでいい人ね」と言うと、ニールは「そうだね」と、余り面白くもないような顔で言う。光江は、二人の関係がますます分からなくなっていった。
 それまでアマンダをあまり見かけなかったのに、その後は、アマンダと一緒に食事をしたりする機会が増えた。そんな時は光江とアマンダがもっぱら話、ニールは余り口もはさむことがなかった。アマンダとの会話で、アマンダのことをもう少し分かり始めた。彼女はもともとイギリス人で、大学生の時、オーストラリアにバックパッカーとして遊びに来たこと。その時会ったオーストラリア人の男性と結婚したけれど、結婚するまでは優しい人だと思っていた彼が結婚した後、お金に細かく口やかましい男だと分かり、うんざりして離婚をしたこと。その後は、今つとめている会社に就職をして、ずっとファッションデザイナーの仕事をしていることが分かった。
 光江は、ニールがどうして彼女の部屋から出て来たか、もう少し親しくなったら、直接聞いてみようと思った。 

著作権所有者:久保田満里子

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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