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オーストラリアの学生諸君:試験(1)

オーストラリアの大学生諸君

試験(その一)

私の名前はケイト・カーターである。スキッピーだ。スキッピーっていうのは、先祖がアングロサクソンで、他の血が混じっていないオーストラリア人って言うこと。多分私の先祖はイギリスからの流刑囚だったんだと思う。オーストラリアはほとんど移民から成り立っている国だ。原住民のアボリジニと呼ばれる人達がいるが、北の方には多いが、メルボルンでは余り見かけない。戦後はヨーロッパからの移民が、1970年代からは中国やベトナム等のアジア諸国からの移民が増え、最近はスーダンなどのアフリカからの移民が増えている。だからメルボルンはいろんな人種が交じり合っている町だ。今ではスキッピーは珍しい存在となった。

私はごくごく普通の女子大生である。友達と映画に行ったり、バイトをしたり、毎日忙しい日を送っている。ただ一つ大学生活で不満なことはボーイフレンドがまだできないことだ。高校は女子高だったから、今度入った男女共学の大学でボーイフレンドを作るぞとはりきっていたのだが、何しろクラスメイトの男の子は皆ダサいのだ。確かに私の入った大学は名門校だけあって、皆頭はよさそうなのだが、かっこよくない。背が高いと思ったら、顔がいけない。顔はまずまずと思うと背が低い。175センチもある私の身長が災いしているともいえるが。いや、身長だけでなく、顔にも問題があるのではないかって?自慢じゃないが、青い目と金髪、それにすらっとした長い足と、十分魅力的だと自分では思っている。選り好みが激しいんだろうと言われれば、それまでだが。まだ1年生だから、卒業するまで3年あるので、焦らなくてもいいと思っている。でも、高校からの仲良し友達と会えば、まずボーイフレンドの話になる。仲良し4人組でボーイフレンドがいるのは、ミッシェルだけ。そのミッシェルのボーイフレンドと言うのも、バツ一のこぶつき。皆でいつもいい男がいないと愚痴るだけである。

大学生活は楽しいけれど、いやなこともある。それは試験だ。試験と聞くだけで、びびってしまう。高校のときは学校内でも優等生だったのだが、私の大学の学生は皆優秀だから、高校のときのようなわけにはいかない。

いい成績をとるためには、一生懸命勉強すればいいのだが、これがなかなかできない。ウエートレスのバイトが週2日入っている。大学には4日行っている。残り一日あるが、この日はのんびりしたいので、遅く起きる。午後1時ごろ起きるのだが、そうすると、すぐ夜が来て、一日が終わってしまう。親はよく眠れるわねと皮肉を言うが、寝耳に水。右から左へと聞き流すことにしている。本当はうるさい親から離れて友達と暮らすか一人暮らしをしたい。でも、友達の話では友達と家をシェアしても少なくとも家賃が600ドルいるそうだ。学生用の一人暮らしのアパートなんて、月1200ドルするというではないか。ウエートレスの時給が17ドルだから、バイトだけのお金では家賃も払えない。そこで、親に文句を言われてもじっと我慢をしている。

大学に入って初めての試験が迫っている。授業は先週終わった。授業が終わった後、3日間スウォットバックと言う試験準備期間がある。一ヶ月前に試験の予定表が出たのだが、私のとっている科目は6月15日、18日、23日それに25日にある。何しろ大学に入って初めての試験なので、どきどきする。科目によっては過去の試験問題が図書館にあるからそれを参考にすればいい。政治と歴史と文化研究の科目は、皆過去の試験問題があった。問題なのは、哲学の科目だ。それは最後の日に試験があるので、ともかく最初の3つの科目に集中して勉強することにしようと作戦を練った。

著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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